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唐 姣姣

2018年6月11日更新

ライティング訂正フィードバックの効果と情意的要因との関連について
―文末スタイル、名詞修飾、活用に着目して―

唐 姣姣
修了年度 2017 年度
修士論文題目 ライティング訂正フィードバックの効果と情意的要因との関連について
―文末スタイル、名詞修飾、活用に着目して―
要旨
(1000字以内)
近年、英語を対象言語としたライティング訂正フィードバック(WCF)の効果を比較する研究が盛んに行われているが、どのようなタイプのWCFがより効果的であるかについては、研究結果が一致していない。さらに、日本語を対象言語とし、直接WCFと「直接+メタ言語」WCFの効果を検証・比較した研究は管見の限り見当たらない。一方、石橋(2013)は、学習者の言語不安や自尊感情などの情意的要因を考慮した教室活動の必要性を指摘しているが、第二言語習得の成否に影響を与える言語不安・自尊感情がWCFの効果とどのような関連があるかについては十分に検討されていない。そのため、本研究では、日本語を対象言語とし、直接WCFと「直接+メタ言語」WCFの効果を検証・比較することと、学習者の言語不安・自尊感情とWCFの効果との関連性の解明を目的とする。
研究対象者は日本の日本語学校に在籍している中級レベルの中国人学習者35名である。学習者を直接WCFを与えるグループ(n =13)・「直接+メタ言語」WCFを与えるグループ(n =14)・作文練習をする統制群(n =)に分けた。本研究では、事前調査を行い、本実験の着目言語項目(文末スタイル・名詞修飾・活用)を決めた。次に、言語不安・自尊感情・言語背景についてのアンケート調査を実施した。そして、事前作文テスト、トリートメント(事前テストのWCFの返却)、直後作文テスト、遅延作文テストを実施した。
その結果、文末スタイルの習得においては、短期的には、2つのWCFの効果は作文練習の効果より大きかったが、長期的には、ほぼ同じであった。名詞修飾と活用の習得においては、WCFの効果は作文練習の効果とほぼ同じであった。そして、活用の習得においては、直接WCFは「直接+メタ言語」WCFより効果的であったが、文末スタイル・名詞修飾の習得においては、2つのWCFの効果に有意差が見られなかった。また、2つのWCFの効果と言語不安・自尊感情の間に有意な相関は見られなかった。
本研究では、WCFを与えた2つのグループと作文練習をした統制群の間に大きな差が見られなかった理由として、WCFを1回しか与えなかったことが考えられる。WCFの回数を増やせば、WCFの効果がより顕著に現れる可能性がある。また、本研究の人数が少なく、グループ分けの仕方に不十分なところがあったため、WCFの効果と言語不安・自尊感情の間に有意な相関が見られなかった可能性がある。今後、研究デザインを改善し、それ以外の言語項目にも着目し、人数とWCFの回数を増やし、更なる研究が必要である。
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