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猿田 静木

2018年6月11日更新

フィンランド人日本語学習者の学習環境支援ニーズに関する研究
―学習動機・学習困難度との関連から―

猿田 静木
修了年度 2017 年度
修士論文題目 フィンランド人日本語学習者の学習環境支援ニーズに関する研究
―学習動機・学習困難度との関連から―
要旨
(1000字以内)
近年,海外の日本語学習者数は減少しているが,独習の学習者は増加していると推測されている(国際交流基金,2017)。本研究で対象とするフィンランドは,衰退しつつあるフィンランドの日本語教育事情により,教育機関での学習機会を得られない独習者など,多様な背景を持つ学習者が存在すると予想される。本研究では,フィンランド人日本語学習者の学習動機・学習困難度・学習環境支援ニーズを明らかにし,教育機関での学習経験の有無や日本語の使用目的によって差異があるのか,また学習動機・学習困難度・属性と学習環境支援ニーズにはどのような関連があるのかを検討し,学習支援の示唆を得るため,質問紙調査を行った。
得られた174部の回答を因子分析した結果,学習動機では8因子(自己研鑽・将来の実用性・異文化理解・日本語自体への興味・洗練された文化への興味・大衆文化への興味・周囲の影響・必然的な状況),学習困難度では5因子(上達への困難さ・日本語運用力の欠如・低い接触頻度・漢字学習の困難さ・厳しい学習環境),学習環境支援ニーズでは4因子(具体的な学習指導・肯定的な承認・多様な教材・交流機会の創出)が抽出された。また,教育機関での学習経験の有無や日本語の使用目的による差異も確認された。
次に,学習環境支援ニーズを基準変数,学習動機・学習困難度・属性を説明変数として,重回帰分析を行った。その結果,『将来の実用性』と『異文化理解』の動機を持つが『日本語能力』が低い学習者は,『具体的な学習指導』を求めていることがわかった。また,『洗練された文化への興味』と『大衆文化への興味』を動機とするが,『日本語能力』が低い学習者は『肯定的な承認』を求めていることが示された。『自己研鑽』を動機とするが『日本語運用力の欠如』『漢字学習の困難さ』『厳しい学習環境』に困難を感じている学習者は,『多様な教材』を求めていることがわかった。さらに,『異文化理解』を動機とし,『漢字学習の困難さ』を感じている学習者は,『交流機会の創出』を支援してほしいことが明らかとなった。
以上の点から,フィンランド人日本語学習者の学習環境支援ニーズと学習動機・学習困難度・属性との関連が明らかになり,物的・人的・社会的リソース全ての面において支援を求めていることが示された。このことから,教室学習の学習者だけではなく独習の学習者も考慮した海外の学習者への遠隔教育の必要性が示唆された。
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