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RUNGTANYANITITORN CHANANTORN

2018年6月11日更新

日タイ母語場面における謝罪の対照研究
-謝罪行動とその反応を中心に-

RUNGTANYANITITORN CHANANTORN
修了年度 2017 年度
修士論文題目 日タイ母語場面における謝罪の対照研究
-謝罪行動とその反応を中心に-
要旨
(1000字以内)
Brown and Levinson(1987)によると、謝罪行動は話し手が聞き手のネガティブ・フェイスを侵害することを望んでいないことを伝え、その侵害を部分的に埋め合わせることができる行動であり、どの文化にも存在する言語行動であるという。しかし、謝罪場面における人間関係の修復方法は、会話参加者双方の言語行動が関わっているため、複雑であると考えられる(ボイクマン・宇佐美, 2005)。また、謝罪に関する先行研究では、文化によって関係修復方法が異なるとしている(池田, 1993等)。これまでの日タイにおける謝罪行動の対照研究は、談話完成テストで収集し、謝罪行動のみ、または謝罪行動に対する反応のみに注目し、それぞれの特徴を明らかにした。しかし、会話の中で会話参加者の双方がどのような言語行動をとり、良好な関係を維持させるかという課題はまだ明らかにされていない。そこで、本研究では日タイ母語場面を比較し、それぞれの謝罪行動とそれに対する反応の特徴を明らかにすることを目的とした。
分析の結果、日本語母語話者(JNS)とタイ語母語話者(TNS)の両者はポジティブ・ポライトネス・ストラテジーとネガティブ・ポライトネス・ストラテジーを用い、相手との良好な関係を維持しようとする姿勢が観察された。JNSの謝罪する側は自分のフェイスを保つより、明確に非を認め、相手の脅かされたフェイスを中心に回復しようする傾向が見られた。それに対して、JNSの謝罪される側は主にポジティブ・ポライトネス・ストラテジーを多用し、自分より弱い立場にある謝罪する側のフェイスを回復するために、気遣いを示したり、許してあげたりすることを好むと言える。一方、TNSの謝罪する側は明確に非を認めることは自分のフェイスを大きく損なう行動であるため、それを避け、積極的に解決方法を提案することで、自分と相手のフェイスを維持しながら、間接的に責任を示そうとする。それに対して、TNSの謝罪される側は相手より強い立場として、間接的に非難を述べたり、弁償要求をしたりすることで、相手のフェイスを脅かしながら、問題解決に重点を置く傾向が見られた。つまり、JNSとTNSにおける謝罪行動の違いは、責任承認の方法である。また、JNSとTNSにおける反応の相違点は、相手のフェイスを維持する方法であると言える。このような違いによって、接触場面でJNSとTNSは互いに誤解を生じる恐れがある。そのため、教師は上記のような違いを考慮し、指導することが求められる。
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