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加藤 千絵

2018年6月11日更新

日本のポップカルチャーが好きな滞日上級日本語学習者の学習法

加藤 千絵
修了年度 2017 年度
修士論文題目 日本のポップカルチャーが好きな滞日上級日本語学習者の学習法
要旨
(1000字以内)
近年増加する日本語学習者の背景は様々であるが、日本のポップカルチャーが動機で日本語学習をしている学習者の存在が広く知られている。外国語環境で日本語学習と日本のポップカルチャーの関係性を見た研究は多いが、その結果は関係があるという研究と関係がないという研究がある。関係があるという研究ではMurray(2008)を中心に数多いが、どれも外国語環境であり、ポップカルチャーは日本語学習の「ツール」として適切であるという結果であった。なお、日本のポップカルチャーについては流動的であるため、Toyoshima(2011)の「漫画、アニメ、ゲーム、ドラマなどのテレビ番組、ライトノベルなどの小説、音楽、食べ物、ファッション」と従来からの定義だけでなく、「ミュージカル、DVDやCD、J-POPのファン活動やアニメ、漫画、ゲームのコスプレ」の定義を使用した。
日本のポップカルチャーが好きな日本語学習者は、日本に留学してなお、それを使用して日本語を勉強する必要があるのだろうか。先行研究より、対象者は日本語上級者であったため、滞日上級日本語学習者に調査を依頼した。その際、Murray(2008)で不明確であった「何をツールに学習」し、「何を学ぶ」のか、また学習者は「自身の学習法をどのように評価する」のかについて具体的にするために研究課題を立てた。しかし、Murrayの研究方法では課題があるため、学習法の調査を行ったPeterson(2000)のインタビューと日記の併用という方法に則った。分析方法では、ツールと学習対象は先行研究に従って分類を行った。プラスかマイナスかについて効果の判断は、対象者のデータを文字化したものに基づき分類した。さらにどのように役立ったかについては川喜田(1967)のKJ法で細かく分類し、プラス効果とマイナス効果をそれぞれ図式化した。
結果、対象者の学習ツールの1/3以上はポップカルチャーの使用が見られ、従来からの視聴覚メディアであるポップカルチャーだけでなく、「イベント」「声優ラジオ」「舞台劇」のような外国語環境では叶わない方法で日本語に触れていた。学習内容も対象者の専門分野からポップカルチャー、社会規範などと幅広く、語彙だけにとどまらなかった。8割のプラス評価と2割のマイナス評価は共に、日本社会への適応を目指す、アイデンティティの変化が起こるものであった。そして対象者の中でのポップカルチャーは、日本語学習の「ツール」ではなく「趣味」であり、学習は付随的だが最も自然にできる学習であるということがわかった。
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