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2018年6月11日更新
修了年度 | 2017 年度 |
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修士論文題目 | 多義形容詞「あまい」「からい」の意味推測に関する調査研究 ―台湾人日本語学習者を対象として― |
要旨 (1000字以内) |
本研究では、台湾人日本語学習者を対象に、多義形容詞「あまい」「からい」の様々な用法において意味を推測しやすいもの・しにくいものの特徴を探ることと、学習者の意味推測の過程に関わる知識を明らかにすることを目的に調査を行った。 まず、研究課題1として「あまい」「からい」の意味推測の難易度を調べた結果、「あまい」「からい」の意味推測の難易度は、先行研究で示された意味構造、またはL1の「甜」「辣」との対応の有無によって単純に説明することはできないということが分かった。さらに、同じ意味カテゴリーでも文によって意味推測の難易度が異なるということも明らかになり、意味推測に影響する他の要素があることが示された。 次に、研究課題2として、日本語学習者は「あまい」「からい」の意味推測の手かがりにどのような知識源を使用しているか調べた結果、先行研究で示された知識源と重なるものとして「D. 文中の他の語から」と「E. 母語の意味から」があることが分かった。一方、多義語であるという特性により「A. 他の用法から」が、そして味覚形容詞であるという特性により「C. 味覚イメージから」と「F. 飲食の経験から」が、反義語があるということで「B. 反義語の意味から」の知識源が新たに確認された。最も意味推測の成功につながりやすい知識源は「E. 母語の意味から」で、最も失敗につながりやすい知識源は「D. 文中の他の語から」であった。また、多く使用された知識源が必ずしも有効であるとは言えないということも分かった。 さらに、研究課題3として「あまい」「からい」の意味推測の成否に関わる知識を調べた結果、「あまい」「からい」の意味が異なると推測に使用される知識源も異なるということが明らかになった。また、意味カテゴリーが同じであっても文を構成する要素の違いによって推測の難易度や有効な知識源が変わるということも分かった。その他、インタビューの回答には表れないL1背景が意味推測の成否に影響していることも示された。 従来の意味推測の知識源に着目した研究の多くは読解文章において使われた知識源を全体的に分析するにとどまっており、語の意味や特性に言及せずに行われてきた。しかし、本研究により意味推測の対象となる語の性質と推測の成否、または使用される知識源は切っても切り離せない関係であることが示され、今後他の語の意味推測研究においても深く検討されるべき点と考える。 |