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SKULKRU KANSINEE

2018年6月11日更新

LINE会話における依頼の談話展開と依頼ストラテジー
―日タイ母語場面を比較して―

SKULKRU KANSINEE
修了年度 2017 年度
修士論文題目 LINE会話における依頼の談話展開と依頼ストラテジー
―日タイ母語場面を比較して―
要旨
(1000字以内)
LINEは近年急速に普及し、若者を中心に人気がある。2014年のLINE調査によると、最も利用者が多いのは、日本、次いで、タイである。日常生活において、LINEを利用する機会が増えているため、依頼などといった日常生活で起こりうるやりとりは、LINEでも頻繁に行われるのではないかと予想される。本研究は、LINE会話における日タイ母語場面の依頼談話に着目し、各言語における依頼の談話展開と依頼ストラテジーを明らかにすることを目的とした。
その結果、依頼の談話展開パターンに関して、日本語母語話者(以下、JNS)は5[①注目要求→③情報提供・確認→④依頼発話]型、タイ語母語話者(以下、TNS)は5[①注目要求→③情報提供・確認→④依頼発話]型と7[①注目要求→④依頼発話→③情報提供・確認]型を中心に使用していることがわかった。つまり、JNSでは、まずは[注目要求]し、[情報提供・確認]で相手に依頼に関する何らかの情報を与えてから依頼をするという傾向が見られた。一方、TNSでは、友人関係という親しい間柄において、[注目要求]してすぐに依頼の意図を伝えることも珍しくないということがわかった。総じて、JNSには「先に自分の状況を共感して理解してもらい、協力を求めながら依頼する」という展開が、TNSには「先に直接的に自分の意思を伝えて依頼する」という展開が好まれると考えられる。
依頼ストラテジーに関しては、JNSはTNSより依頼ストラテジーを多く使用していることがわかった。使用された依頼ストラテジーについて、JNSとTNSの両者に共通している点として、《A.呼びかけ》、《E.状況説明》、《J.困惑》というストラテジーが挙げられる。《E.状況説明》に関しては、JNSは依頼する前に使用しているが、TNSは依頼する前に限らず、依頼した後にも同程度に使用していることがわかった。一方、JNSとJNSの間で、特に異なった点として、《G.選択権提供》、《K.謝罪》、《L.直接的な依頼》というストラテジーが挙げられる。JNSはTNSでは全く観察されなかった《G.選択権提供》と《K.謝罪》ストラテジーを多く使用していることがわかった。一方、TNSはJNSでは使用が少なかった《L.直接的な依頼》を半数以上が使用していることがわかった。
以上の結果から、JNSにとっては、依頼に対する負担を強く感じているためか、相手への配慮が不可欠な要素になっていると考えられる。談話展開パターンや依頼ストラテジーの使用を通じて、頻繁に相手への配慮を行っている。一方、TNSはお互いに助け合うという意識が高く、親しみ感を与えながら気軽に依頼していた。すぐに依頼の意図を伝えることが、TNSの友人同士に見られる配慮なのではないかと考えられる。
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