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紅野 知世

2018年6月11日更新

教職課程を履修する大学生の外国人児童生徒に対する意識と曖昧さへの態度、異文化接触経験との関連

紅野 知世
修了年度 2017 年度
修士論文題目 教職課程を履修する大学生の外国人児童生徒に対する意識と曖昧さへの態度、異文化接触経験との関連
要旨
(1000字以内)
近年、日本の学校に在籍する外国人児童生徒の増加と散在化が進み、多文化共生の意識や、外国人児童生徒教育の知識を持つ教員の育成が課題となっている。しかし、そのような教員の育成は大学の教職課程において十分に行われていないのが現状であり、教職課程の大学生が外国人児童生徒に対しどのような意識を持っているのかは検討すべき課題であると言える。
本研究では、異文化接触場面での反応に影響を与えると考えられる西村(2007)の「曖昧さへの態度」と異文化接触経験に着目し、外国人児童生徒に対する意識との関連を明らかにするため、教職課程を履修する大学生96名に質問紙調査を行い、統計的分析を行った。
研究課題1では、大学生の外国人児童生徒に対する意識を明らかにするため因子分析を行い、〈日本人児童生徒の多様性理解の促進〉、〈学級運営の難しさ〉、〈指導を担当することへの不安〉、〈日本人児童生徒と同様の対応〉、〈母文化の尊重〉、〈日本人児童生徒と同様に指導することの難しさ〉の6因子が抽出された。また、t検定の結果、外国人児童生徒との共就学経験のある大学生は、ない大学生より〈指導を担当することへの不安〉が低く、外国人児童生徒の教育について学んだ経験のある大学生は、ない大学生より〈母文化の尊重〉が高いことが示された。
研究課題2では、大学生の曖昧さへの態度を明らかにするため因子分析を行い、〈曖昧さへの不寛容〉、〈曖昧さの受容〉、〈曖昧さの放置・混乱〉、〈曖昧さへの不安〉の4因子が抽出された。また、t検定の結果、留学経験または海外在住経験のある大学生は、ない大学生より〈曖昧さへの不寛容〉が低いことが示された。
研究課題3では、外国人児童生徒に対する意識に影響を与える要因を検討するため重回帰分析を行った。その結果、〈日本人児童生徒の多様性理解の促進〉には〈曖昧さの受容〉、〈曖昧さへの不安〉の正の影響が見られた。〈日本人児童生徒と同様の対応〉には、〈曖昧さへの不寛容〉、〈曖昧さの放置・混乱〉が正の影響、〈曖昧さへの不安〉が負の影響を及ぼしており、この二つの意識は相反する曖昧さの態度の影響を受けることが示された。また、この2つの意識の比較から、曖昧さへの不安は外国人児童生徒に対する意識を高めることが示唆された。本研究の結果から、教職課程には、以上のような異文化接触経験や曖昧さへの態度を持つ人材の育成が求められると言える。
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