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権野 禎

2018年6月11日更新

トランス・ランゲージング・スペースが中日バイリンガル高校生の日本語リテラシーにおける学習方略に与える影響
―学習態度の変容に焦点を当てて―

権野 禎
修了年度 2017 年度
修士論文題目 トランス・ランゲージング・スペースが中日バイリンガル高校生の日本語リテラシーにおける学習方略に与える影響
―学習態度の変容に焦点を当てて―
要旨
(1000字以内)
日本の高校に通うバイリンガル(BL)高校生の日本語のアカデミック・リテラシーを養成する研究は緊急の課題である。しかし地域の支援教室で日本語指導者の不足・日本語リテラシー教授法及び学習法の未確立より、BL高校生の日本語指導・支援は積極的に行われていない。
そこで本研究では、滞日歴が3年以下の中日BL高校生3人を対象とし、対象者が自らの言語レパートリーを自由に使うことができるトランス・ランゲージング(TL)・スペース(Wei, 2011)を提供し、約3ヶ月間、延20回の協働的リテラシー学習活動を行った。対象者のTLによる学習方略が日本語のアカデミック・リテラシー養成に与える影響を明らかにすることを目的とし、リーディング及びライティング課題による成果物と活動時のTL使用に関する質問紙調査とその後のインタビュー調査をデータとして収集し、分析した。
その結果、対象者はTLの使用を肯定的に考え、協働的活動で積極的に学習する姿勢が見られた。そして対象者は言語の境界を超えて言語能力の拡大、言語レパートリーの拡張及び学習方略(García & Kano, 2014)としてTLを使用していた。また、リーディング課題では対象者3人の「内容読解」及び「論理読解」(古賀, 2014)に関する設問において、回を追うごとに正解率を上げていった。さらに、ライティング課題では、全く書けなかった要旨が最終的に何とか1人で書けるようになった。課題短作文ではTLを使用してブレーンストーミングとアウトラインの作成を行い、主張と理由そしてまとめまで一貫性のある文章が産出できるようになった。
このことによって トランス・ランゲージング・スペースにおける、BL高校生は自らの言語レパートリーを自由に使用するTLを、活動にてコミュニケーションを行うことを目的として使用するだけではなく、自らのアカデミック・リテラシー能力の促進のために学習方略として活用していると考えられる。従って、本研究は学習支援教室においてバイリンガル高校生のTLの使用を許容し協働的リテラシー活動を行うことが、日本語のリテラシーを養成する基礎的な土台となる可能性が示唆されたと考えられる。
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