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清水 晶子

2018年6月11日更新

海外日本語教育実習を通した実習生の教育観の変容
―教師観・学習者観・授業観の変化に着目して―

清水 晶子
修了年度 2017 年度
修士論文題目 海外日本語教育実習を通した実習生の教育観の変容
―教師観・学習者観・授業観の変化に着目して―
要旨
(1000字以内)
グローバル時代を迎え、第二言語を用いたコミュニケーションと、第二言語教育が盛んになってきている。日本語教育もその例外ではなく、日本語を学ぶ学習者数は、約40年間で30倍近く増えている(国際交流基金, 2017)。教師数もそれに伴い増え続けているが、教師は依然として不足している。また、学習者の増加に伴い、学習者のニーズ、レベルが多様化してきており、教師もそれぞれのニーズに対応していきながら、学習者が主体的に学べる環境を作っていくことが重要であると考えられる。
そこで本研究では、社会実践な学習観の一つである状況的学習論と実践コミュニティ(レイヴ・ウェンガー, 1993)に着目し、それらを取り入れている日本語教育現場の一つであるニューサウスウェールズ大学(以下UNSW)における実践報告(トムソン, 2017)と教育実習研究(森山・大西・山崎, 2014)に着目した。そして、教育実習生は、実際にそのような環境で実習することによって、教師として成長しながら社会実践的な教育観と学習者主体の教育観を学ぶのかを明らかにすることを目的として、教育実習生の実習による教育観の変容を分析した。
そして以上の目的を明らかにするために、研究課題(RQ)を設定した。
RQ1: 教師観は実習前後でどのように変容したか。
RQ2: 学習者観は実習前後でどのように変容したか。
RQ3: 授業観は実習前後でどのように変容したか。
調査では、日本のO大学院の海外日本語教育実習プログラムによりUNSWで2013年度に教育実習を行った大学生・大学院生4名を対象としたインタビューデータを借用し、SCATを用いて分析を行った。
分析の結果、実習前、実習生たちは、教師主体という教師観、一部の自国の学習者や日本語学校の学習者を元にした偏った学習者観、学習者が受身型の授業観を持っていた。実習後は、教師は「学習者のサポート役」・「学習者のロールモデル」という教師観、多様な学習者観、「学習者主体」の授業観にそれぞれ変容した。
今回利用したデータは2013年度の実習のものである。現在対象者4名は日本語教師として教壇に立っているため、教育実習で得たものの影響や、教授法を調査することで、教育実習生の成長過程、教育観の変容と教育実習の関係をより詳細に明らかにできると考えられる。
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