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小田代 貴子

2018年6月11日更新

聴解ストラテジーの使用の実態
―台湾人日本語学習者を対象にして―

小田代 貴子
修了年度 2017 年度
修士論文題目 聴解ストラテジーの使用の実態
―台湾人日本語学習者を対象にして―
要旨
(1000字以内)
コミュニケーションで重要な要素の一つとして、相手の意図を正しく理解することが挙げられる。相手の意図を正しく理解するためには、正確な「聴解」が必要であるが、日本語の言語知識が不足している学習者にとって、日本語の正確な「聴解」は母語以上に困難なものになると考えられる。つまり、コミュニケーションにおいて「聴解」は、非常に重要な要素の一つであるがゆえに、使うことが難しい能力である。そのような「聴解」において学習者は、未知語を前後の文脈から推測したり、聞き逃した部分や、曖昧な部分を補うために、聴解ストラテジーを使用する。より良い聴解活動のためには、聴解ストラテジーを意識的、積極的に活用することが重要だと考えられており、どのような聴解ストラテジーの使用が聴解を成功に導くのかを研究する必要がある。
そこで本研究は、日本語でのコミュニケーションの機会が多い台湾人日本語学習者を対象とし、聴解に成功した学習者はどのような聴解ストラテジーを使用したか、その実態を明らかにすることを目的とする。調査方法は、まず聴解テープを聞いてもらい、その内容に関するテストを行った。その後、聴解ストラテジーチェックリストを記入してもらった。聴解テストの点数で上位群と下位群に分け、それぞれがチェックした聴解ストラテジーを分析した。
その結果、両群から、先行研究で結果が分かれていた「メタ認知ストラテジー」が確認され、「メタ認知ストラテジー」の重要性が明らかになった。また、上位群と下位群においてチェックされた聴解ストラテジーに統計的有意差はなかった。有意差がなかったため考察の根拠としては弱まるが、聴解ストラテジー平均使用率を比べると、下位群には、単語などの局所的な部分に集中する「ボトムアップの聴解」の傾向が見られた。それに対し上位群では、母語知識や実体験による知識などを運用しながら行う「トップダウンの聴解」の傾向が見られた。しかし、上位群も「ボトムアップの聴解」を行っていることから、聴解の成功には、「ボトムアップの聴解」に加えて「トップダウンの聴解」が必要であるということが示唆された。さらに、「自身の聴解の姿勢を評価する」聴解ストラテジーの使用がトップダウンとボトムアップを左右している可能性があることが明らかになった。
今後の課題は、対象者の人数・日本語レベルの拡大と、チェックリストの妥当性を高めることである。
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