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李 櫻柳

2020年10月28日更新

「日本事情」科目を通じて変わる学生側の「日本文化」に対する認識―中国の大学における日本語専攻大学生を対象としてー

李 櫻柳
修了年度 2019度
修士論文題目 「日本事情」科目を通じて変わる学生側の「日本文化」に対する認識―中国の大学における日本語専攻大学生を対象としてー
要旨
(1000字以内)

 今までの「日本事情」に関する研究は、来日外国人留学生を対象者とする「日本事情」科目におけることが多かった。しかし、母国で日本語を勉強する学生にとっても、日本文化を学ぶことも同じく重要である。中国の「教学大綱」では「日本事情」授業の標準を定めたが、曖昧な授業要求であり、そのため学校によってその内容と形式は様々である。このような環境である中、学生がどのような認識を構築し変容しているのか疑問となる。

 中国における二つの大学の「日本事情」を受講した日本語専攻の学習者とその担当教員が本研究の対象者である。半構造化インタビューを用い、「日本事情」に対する認識にまつわる質問をする。対象者たちの回答を録音し、それから文字化、翻訳を行った。分析方法は、プロセスを明らかにしたいため、M-GTA(Modified Grounded Theory Approach)法を使った。

 結果、K校の場合では、受講中に最初の【教師の影響】から、【自己学習】につながり、最終段階では【授業評価】にたどりつき、「日本事情」の授業内容と形式から、各々に自分の日本文化への認識を形成していることが明らかになった。一方W校は、【母国と違う文化】という日本文化の印象から、日本文化自身が持つ【独特さ】を感じ、理解できたことが、W校の対象者の発言からわかった。

 研究課題2については、K校の学生は受講中に教師やSNSの力を借り、自己学習を通して知りたいことを知っていた。またポジティブな面とネガティブな面から、授業の内容評価を行うことから、受講中に全体的な概観をしたことがわかる。一方W校の学生は、受講中のことを思い出しながら、地理や歴史のことについて語っていたが、いざ「日本文化」に絞ると、話す内容が少なく、薄い傾向がある。受講後、K校の学生は[精神観念]のような全体的な日本文化の概観を通し、このような日本文化を、「日本事情」で学んだとはっきり意識している。W校の学生は、比較的漠然な日本文化の印象を持っている。

 「教学大綱」という規定が存在している中、各大学における「日本事情」に対する学生側の認識と考えを明らかにし、また日本文化を教えられる意義を学生と教師側両方ともに調査することを今後の課題とする。

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