ページの本文です。

宣 婷婷

2020年10月28日更新

留学生から指導教員への電子メールに関する一考察―中国人留学生の依頼メールに焦点を当てて―

宣 婷婷
修了年度 2019度
修士論文題目 留学生から指導教員への電子メールに関する一考察―中国人留学生の依頼メールに焦点を当てて―
要旨
(1000字以内)

 大学院留学生が、メールで指導教員とコンタクトを取ることは一般的に見られることである。例えば、レポート提出、ゼミに関する連絡、課題や研究についての相談など、大学院生活の中で指導教員にメールを送る機会は少なくない。メールは他の文章と同様に、日本語の文法や表現、構成、内容などに注意して書く必要がある。多くの日本語学習者は日本に来て日本語が主なコミュニケーションの手段になってから初めて、メールの難しさを実感している(閻,2018)。そのため、留学生向けのメールの書き方を指導する授業が求められていると思われる。

  しかし、日本語教育の現場において、レポート、意見文といったアカデミック・ライティングについての指導が近年重視されていたが、留学生が実際の場面において書くメールに対する指導が十分ではない(由井,2013)。具体的な支援策を考える上で、留学生の日本語のメールに対する意識を明らかにし、留学生が書いたメールを分析する必要があると考えられる。

  そこで、本研究は対象者が異なる時期に書いた実際のメールをデータとして取り上げ、「〜たい」の用法を中心に対象者が書いたメールの変化を考察した。そして、メールの変化に影響を与えるものおよびメールのやり取りにおける留学生の学びを明らかにした。

  その結果、以下のことが明らかになった。まず、メールの形式と基本の書き方は、留学生の来日初期にすでに定着していた。来日初期と比べ、中国人留学生の来日後期のメールでは「〜たい/たいです」の使用がかなり減り、丁寧度が高まった。そして、中国人留学生は依頼メールを書く際に、日本語能力の制約と母語文化に影響されながらも、周りのリソースを利用し、自己推敲しながらメールを書き上げている。最後に、メールのやり取りにおける中国人留学生の学びを分析した結果、留学生は異文化理解を深めるとともにメールそのものに対する理解も得たことが示された。

 結果より、留学生のメール作成の過程においては、母語の影響だけではなく、日本語のコミュニケーション能力も緊密な関わりを持っていることが示唆された。このことから、指導側が学習者のコミュニケーション能力の育成を促進すると、学習者は日本語でより円滑なコミュニケーションができるようになると期待される。

  •  
  • このエントリーをはてなブックマークに追加