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姜 芳雨

2020年10月28日更新

家庭言語環境と子どもの二言語能力の関係について-中国につながりを持つ子どもの語彙力と読書力に注目する研究-

姜 芳雨
修了年度 2019度
修士論文題目 家庭言語環境と子どもの二言語能力の関係について-中国につながりを持つ子どもの語彙力と読書力に注目する研究-
要旨
(1000字以内)

 グローバル化に伴い、外国につながりを持つ子どもが日本でますます増加している。文部科学省の調査により、日本語指導が必要な児童生徒の中で、中国につながりを持つ子どもが最も多く占めている。しかし、彼らの現地語(日本語)だけではなく、家庭言語として使用されている母語(中国語)を含め、二言語能力を総合的に見る研究はまだ少なく、更に、子どもの教科学習言語能力に関わる語彙力、読書力に関する調査は乏しい。そのため、本研究は中国につながりを持つ子どもの二言語の語彙力と読書力の実態を把握し、それと家庭言語環境との関係を明らかにすることを目的とする。

 対象者は3つのグループに分けられている。本研究で焦点を当てるのは在日中国につながりを持つ子どもという日中バイリンガルグループ(親子26組)であるが、子どもの言語能力を客観的評価するために、中国語モノリンガルグループ(15人)と日本語モノリンガルグループ(44人、参考文献の巻末資料を引用)も設定した。

 二言語の語彙力と読書力の評価を行った結果、日中バイリンガル児童について、片方の言語の語彙力と読書力が母語話者の学年相当レベルに達した子どもは、日本語能力では9人、中国語能力では3人である。一方、日本語と中国語両方とも母語話者の学年相当レベルに達した子どもは1人のみ、二言語とも学年より遅れている子どもは4人である。また、統計をかけた結果、有意な正の相関関係が見られたのは、「中国語の読書力」と「日本語の読書力」の間、「日本語の読書力」と「長期滞在年数」の間、「中国語の読書力」と「母親の学歴」の間であった。

 本研究の結果から、対象となった日中バイリンガルの子どもの日本語能力(語彙力と読書力)は中国語能力(語彙力と読書力)より優れていることがわかった。更に、中国語の読書力を保持することは、彼らの日本語の教科学習言語能力の発達にマイナスの影響を与えていないことが明らかになった。最後に、日本に居住する時間が長い子どもは、日本語の読書力において高い評価をとるという結果が見られた。そのため、彼らにとって得意な言語は日本語である、あるいは日本語に偏っていくと考えられるが、両親とも中国人母語話者の家庭では、中国語は家族と交流するために欠かせない言葉であるため、家庭内でバランス良く二言語環境を作ることが大事だと考えられる。

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