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華 霊鈺

2020年10月28日更新

ブルームのタクソノミーによる指導の効果
-日本語を専攻とする中国人大学生の質問力に焦点を当てて-

華霊鈺
修了年度 2019度
修士論文題目 ブルームのタクソノミーによる指導の効果-日本語を専攻とする中国人大学生の質問力に焦点を当てて-
要旨
(1000字以内)

 21世紀に入り、インターネットの爆発的な普及によって、全世界における情報を自由に入手し、発信できるようになった。ネットなどのメディアで今目にしている情報が果たして信頼に値するものか、自らの判断が求められる。そこで、中国の大学の外国語専攻でも、言語専門の知識・スキルに加え、総合的な思考力を養うことを教育目標として掲げている。特に、質問力がある。しかし、質問力に関する研究は途についたばかりであり、実際の授業で質問力をどのように育めば良いのかについては、明確ではない点が多い。したがって、本研究は質問力に注目し、中国の大学の日本語専攻においてもっとも多い日本語読解授業において、学習者の質問力を育てる指導を試み、その指導は学習者の質問力を向上させるか、また学習者はその指導授業をどう受け止めるかを明らかにする。

 本研究の対象者は中国・上海のある大学に在籍している大学3年生10名である。10名を統制群5名、実験群5名に分けた。データ収集に協力してくれた教師は同じ大学に在籍している日本語教師1名である。実験群の対象者は週2回程度、計4回の授業を協力してもらった。教師協力者は週2回程度、計4回の授業を実施してもらった。指導授業は毎回90分である。統制群の対象者は指導授業に参加せず、実験群と同様に、普段の大学の日本語授業を受講するのみであった。事前・事後テストおよびインタビュー、授業に関する感想のデータを通して、質的に分析した。

 その結果、ブルームのタクソノミーを援用した質問に関する指導を通して、対象者の質問能力の上昇傾向が見られた。また、対象者は質問に関する指導を<質問に関する学び>、<質問に対する意識の芽生え>、<継続的学習の契機>、<質問に関する指導の肯定的な受容>と<批判的思考の芽生え>と受け止めた。

 このことから、日本語教育の学習者の質問能力を育成するためには、学習者に質問させるだけでなく、まず質問の定義や階層を明示し、自らの質問に注意を促すことが重要だと考えられる。また、質問に関する指導は外国語の学習者の継続的学習と批判的思考の芽生えになる可能性があることが示唆された。

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