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劉 文鈺

2020年10月28日更新

ピア・リーディングを取り入れた読解活動の試み―批判的思考態度に着目して―

劉 文鈺
修了年度 2019度
修士論文題目 ピア・リーディングを取り入れた読解活動の試み―批判的思考態度に着目して―
要旨
(1000字以内)

 近年、学習者が主体的に参加し、能動的に学ぶことを重視するアクティブ・ラーニング(以下、AL)という指導・学習方法が挙げられており、教育界で注目されている。しかし、ALの導入にあたって、教育実践の過程で様々な課題も生じてきた。特に、学習成果の評価ついての判断することは難しいと指摘されている。先行研究からALにおける学習成果は、a.学習者の視点から捉える必要性、b.思考力の非認知領域における批判的思考態度に着目する重要性が明らかになった。よって、本研究は日本語教育において、近年注目されるようになってきたピア・リーディングという代表的な学習活動を例として、批判的思考態度自己評価表(非認知領域の学習成果を検証するもの)を用い、学習者の視点での学習成果(自己評価)はどのようなものかという研究方向(学習者の捉え方)を定めた。さらに、学習者の捉え方について、①自己評価の結果(研究課題1)と、②自己評価表の内容に対する理解(研究課題2)、という2つの視点に基づいた考察を行った。

 研究方法として、中国人留学生4名を対象に、ピア・リーディングの読解活動を4回行った。①については、批判的思考態度自己評価表の事前と事後の自己評価の点数を比べた。②については、学習者に事後インタビューで批判的思考態度評価表における4つのカテゴリー;【論理的思考への自覚】、【探究心】、【客観性】、【証拠の重視】に関する発話を抽出して分析した。研究課題1の結果として、学習者の自己評価の点数にばらつきが見られ、前後の判断基準が変わったことがわかった。研究課題2では、研究課題1での学習者の基準の変化の原因をさらに調査したが、学習者が自己評価表の内容を振り返ることで、相手とのやり取りの中で評価表の内容への理解が深まり、さらに批判的に考えようとする態度が見られた。

 本研究は、非認知的側面の評価について、教師と学習者の両者に新たな評価視点を提供することができ、教育現場における教師の非認知側面への関心を喚起するきっかけになったと考えられる。また、ALのような「能動的現場」において、「能動的態度」が生まれており、そこから学びにつながる可能性を示唆している。しかし、本研究はまだ「能動的態度」に留まっている。今後教師がどのような支援や指導をすれば学習者に行動レベルの「能動的学び」を結びつけられるかについての考察が期待される。

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