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2024年5月31日更新
修了年度 | 2023度 |
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修士論文題目 | 付随的語彙学習におけるインプットモードとL2習熟度が 語彙習得に与える影響 ―中国人日本語学習者を対象として― |
要旨 (1000字以内) |
語彙力を向上させる方法は、主に意図的語彙学習と付随的語彙学習の2つの種類があ る。教育現場においては意図的語彙学習が中心になるが、学習時間が限られているため、 学習者は第二言語を用いた読書、会話、視聴活動などで出会った新出語彙を付随的に習得 することが求められる。しかし、付随的語彙学習は効率が悪い。そこで、効率に影響を与 える要因を明らかにすることで語彙学習を支援することができる。現実の生活には読解、 聴解、聴読解などの形式のインプットが存在しており、学習者にとって効率がよいインプ ットを提供するためには、インプットモードの効果を比較する必要がある。また、学習者 のL2習熟度を把握し、習熟度に合わせた支援をする必要もある。 そこで、本研究は中国人日本語学習者を対象として、インプットモードとL2習熟度と いう2つの要因が、付随的語彙学習にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目 的とする。調査方法は、SPOTテストで習熟度を測り、対象語を含むテキストの読解、聴 解、聴読解の後で、形式、文法、意味、コロケーション側面の知識の習得を測るため4つ のテストを行った。 その結果、学習者のL2習熟度にかかわらず、聴読解は読解や聴解モードより効果があ るということがわかった。形式とコロケーション知識における聴読解と読解の間に有意な 差は見られなかったが、聴解より効果があった。文法知識における3つのモード間に有意 な差は見られなかった。意味知識における聴読解には促進効果があったが、読解・聴解で は見られなかった。 そして、付随的語彙学習は上位の学習者に適しているが、下位の学習者は、語彙知識が 付随的に学習できるインプットモードに制約があり、効率が悪いことがわかった。形式、 文法、コロケーション知識では、L2習熟度の主効果が見られたが、意味知識では見られ なかった。また、形式知識のみに交互作用が見られた。聴解においては、上位と下位の差 が見られなかったが、読解と聴読解において、上位は下位より促進効果があった。下位の 学習者においては、インプットモードの効果に差が見られなかったが、上位の学習者にお いては、読解と聴読解の効果が同じで聴解より優れていた。上位、下位とも聴解における 形式知識の習得が最も難しいことが窺えた。 今後の課題は、より長いテキストを用い、遅延テストも行い、さらには対象語の出現頻 度も考慮に入れる必要がある。 |