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2024年5月24日更新
修了年度 | 2023度 |
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修士論文題目 | 朝中バイリンガル日本語学習者の未知漢字語彙の意味推測と手がかりの使用 —中国語モノリンガルとの比較から— |
要旨 (1000字以内) |
近年、未知漢字語彙の意味推測に関する研究は漢字圏出身のモノリンガル日本語学習者を対象とした研究が多くなってきてた。しかし、2つの言語の漢字知識を持つのバイリンガル日本語学習者は、モノリンガル学習者に比べ、使用できる手がかりがさらに増えるため、彼らの意味推測のプロセスはモノリンガルと異なる結果になる可能性が高い。よって、漢字圏のバイリンガル学習者における日本語未知漢字語彙の意味推測はどのようなものか、を明らかにする必要がある。そこで、本研究ではバイリンガル学習者における意味推測を明らかにする目的に、日本語と音韻・形態・意味において類似性が強い朝鮮語と中国語のバイリンガル日本語学習者(CKJL)を対象に、母語と語彙の意味対応関係の異なりによる意味推測の正確さと手がかり使用に、文脈なしの記述式テストで調査した。 中国語モノリンガル(CJL)と比較検証を行い、分析した結果、CKJLはCJLの意味推測に比べ、より多くの手がかりが使用できるだけではなく、それをより上手に統合使用することができ、意味推測の正確さに寄与することができた。また、意味対応関係が意味推測の正確さを影響しており、CJLとCKJLにとってS語はD語に比べ、推測しやすいことが明らかになった。しかし、文脈なし条件において、語彙の意味対応関係は意味推測における手がかりの使用への影響が見られなかった。それは、文脈なし条件では対象語がS語かD語かを判断できないためである。さらに、意味推測の正確さと手がかり使用の相関分析から、両群において「日本語の発音」手がかりの使用は正確さに寄与できたが、「中国語の発音」手がかりは意味推測の正確さに負の影響の可能性があるとわかった。それは、中国語と日本語の音韻はそれほど類似していないことから説明でき、CKJLはCJLより音韻手がかりの使用が多く見られたことからも、CKJLは朝鮮語の影響を受け、音韻的な連結がより強いことがわかった。最後に、結果から同形漢字未知語の推測を含めた全ての意味推測において、単一な手がかりに過度依存せず、それ以外の手がかりとも照合しながら、多様な手がかりを使用することや統合使用のスキルを向上が必要性も示唆した。 |