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2024年5月21日更新
修了年度 | 2023度 |
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修士論文題目 | 読解における中国人日本語学習者の未知漢字語彙の意味推測 ―読解力や文脈手がかりの位置タイプに着目して― |
要旨 (1000字以内) |
中国人日本語学習者は母語に漢字を持つが、未知漢字語彙の意味推測の際、語彙自体の要素(語彙手がかり)だけでは推測し切れない場合も多い。学習者は未知語の現れた文脈内、あるいはその前後の文脈から、その語の定義、解釈、例を与える文脈手がかりを探し、語の意味を推測する傾向がよく見られる。そして、読解力は文の意味理解と関連し、意味推測に影響を与える可能性があるため、本研究では、中国語を母語とする日本語学習者が意味推測をするにあたり、文脈手がかりの位置タイプと読解力によって意味推測の成功率が異なるかを明らかにすることを目的とした。 日本語専攻の中国人大学生16名を実験群とし、日本人母語話者5名を対照群とし、意味推測調査を行った。得られたデータをSPSS Ver.25を用い、文脈位置タイプ要因(前置手がかり条件・同文手がかり条件・後置手がかり条件)と日本語読解力要因(下位群・上位群)の3×2の2元配置の分散分析を行った。 分析の結果、前置、後置手がかりでは、L2読解力の両群の間に差がみられず、同文手がかりでは、L2読解力の違いによる意味推測の成功率に有意な差が見られた。しかしこの結果は、本研究の結果は先行研究と逆の結果が得られた。その理由は調査紙作成に問題があったと考える。主に3点あり、①文脈手がかりの位置タイプの分類が正確に行えておらず、文章により手がかりの個数が統制されていなかった。また②対象語の難易度(母語との対応関係)が十分統制できていなかった。そして③文章の文脈量が課題によって異なってしまったことである。よって、正しい考察ができず、結論を出すことができなかった。また、読解力は意味推測の成功率に影響を与えていなかった。その理由は、日本語学習者の読解力が統制されていなかったためと考えられる。その上で、読解力の違いにより両群間で成功率の差が大きい項目のみを取り上げ分析した。特に下位群の場合は、与えた文章を正しく理解できておらず、意味推測に失敗し成功率が高まらなかったと考えられる。 研究課題は2つとも想定していた結果が得られなかった。事前に位置タイプの各条件を細かく設定すべきであったことを改めて認識した。今後は、上述の問題点を改善し、さらなる調査が必要だと考えられる。 |