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朱清雅

2024年5月28日更新

日本在住の中国人JSL生徒の漢語習得状況について ―日本語漢語知識と中国語漢語知識の関係から― 

朱清雅
修了年度 2023度
修士論文題目 日本在住の中国人JSL生徒の漢語習得状況について ―日本語漢語知識と中国語漢語知識の関係から― 
要旨
(1000字以内)

   文化庁(1978)は日本語の漢語を中国語との関係から同形同義語(以下、S 語)、同形異義語 (以下、D語)、同形類義語(以下、O語)、日本語にしかない語(以下、N語)の4つに分類し た。三浦(1984)は文化庁(1978)に基づき、O語をさらにO語 1(日>中)、O語2(日<中) 、 O語3(日>共通義<中)に詳しく分類した。 

 中国人成人学習者を対象に日本語漢語の習得状況を調査した研究の中に、以上述べた漢 語カテゴリーの枠に基づいたことが多い。しかし、日本語を第二言語とする中国人生徒(以 下、JSL 生徒)を対象に日本語漢語を漢語カテゴリー別まで詳しく分類し、調査した研究は 管見の限り、見当たらない。そして、バリリンガル子どもの母語と第二言語とも発展途上 であるため、日本語漢語の習得は成人学習者と同一視できないと考えられる。

  そのゆえ、本研究では、中国人JSL生徒の日本語漢語カテゴリーに基づく習得難易度を 明らかにすることを目的とする。そして、同年齢層の Mono レベルに達しているかどうか を明らかにすることを目的とする。また、日本語漢語の習得に影響を与える他の要因につ いても議論する余地があると考えられる。

  本研究では 22 名の中国人中学生 JSL 生徒を対象に正誤判断式の日本語漢語テストを行 った。さらに、JSL生徒の各漢語カテゴリーの正答率を20名の日本人中学生Mono生徒の 正答率と比べた。その結果、6つの漢語カテゴリーの中、S語とO語1だけ、中国人JSL生 徒の正答率は日本人Monoレベルに達していることが明らかにされた。そして、JSL生徒に とってO語2、O語1、S語、N語、D語の習得難易度はほぼ同じだとことが明らかにされ た。 また、O語の場合、O語3の習得が一番難しいことも明らかにされた。さらに、習 得しにくい漢語と習得しやすい漢語の日本語独自義、中国語独自義、日中共通義と日中両 言語の使用頻度の関係を確認した結果、3 つの意味とも日中両言語の使用頻度との関係が あることが明らかにされた。 

 本研究で明らかにされた結果によると、中国語を母語とする中国人JSL生徒に対しては 日本語漢語の習得が簡単でないことが明らかにされた。それゆえ、このことは中国人 JSL 生徒に対しての日本語漢語の指導において重要な意味を持つと考えられる。

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