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松田 朋子

2019年6月5日更新

モンゴル人留学生を対象としたピア対話による作文活動の試み―言語使用に焦点を当てて―

松田 朋子
修了年度 2018年度
修士論文題目 日本生まれ日本育ち非漢字圏ルーツJSL児童生徒の漢字習得状況とその背景
要旨
(1000字以内)
平成28年度文部科学省の「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」 によると、日本語指導が必要な児童生徒数は年々増加傾向にあることが明らかになっている。

日本語では、ひらがな・カタカナ・漢字の三種類の文字が使用されており、読み書きを習得するのは決して容易ではない。小学校では、学力の基礎となる文字の指導が行われるが、漢字は6年間で1006字を習得しなければならない。また、生活や教科で使用される重要な語彙のほとんどが漢字で表記されるため、漢字の読み書きができなければ概念を理解し、知識を増やすことに困難が生じることが指摘されている。

本研究は、日本生まれ日本育ちで、なおかつ非漢字圏ルーツのJSL児童生徒7人(小学生3人、中学生4人)を対象に、小学校第1学年から第6学年の配当漢字の習得状況を明らかにし、漢字習得における成績上位者がどのような特徴を持ち、どのような学習環境、言語環境の中にあるのかを明らかにすることを目的とする。

漢字テストの結果、「読み」のほうが「書き」よりも平均正答率が高く、低学年の配当漢字においては、「読み」と「書き」の力に大きな差は見られないが、中学年以降の配当漢字になると「書き」の平均正答率が下がることがわかった。読みと書きの平均正答率の差が大きく、読むことはできても書くことは難しいと考えられる漢字の多くは、抽象語彙や形が複雑な漢字であったが、中には形が複雑でなく、意味も平易であると考えられる漢字にも書き誤りが見られた。また、個人差はあるものの、中学生であっても、小学校中学年以上の配当漢字の習得は十分であるとは言い難いことがわかった。

成績上位群の児童生徒は、漢字に対して苦手意識を持っておらず、特に困難を感じていないことがわかった。また、彼らは他の対象者と比較して読書を多く行っており、読書をしない児童生徒と比較して、漢字の表記に誤りが少なく、正確であることも明らかになった。また、彼らの保護者は子どもの日本語習得に高いレベルを求めていることは共通していたが、子どもの母語習得に対する意識は異なっており、保護者が子どもの母語習得に対して積極的な場合とそうでない場合とに分かれ、実際の子どもの母語レベルも大きく異なっていることが明らかになった。

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