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CHITTARARAK CHANIKA

2019年6月5日更新

ビジネス場面における敬語使用に関する研究―タイ日接触場面と日本語母語場面の比較から―

CHITTARARAK CHANIKA
修了年度 2018年度
修士論文題目 ビジネス場面における敬語使用に関する研究―タイ日接触場面と日本語母語場面の比較から―
要旨
(1000字以内)
本研究では、日本国内およびタイにおける日系企業において日本人とタイ人がコミュニケーションする機会が増えつつあることから、ビジネス場面を取り上げ、タイ日接触場面と日本語母語場面を比較的に調査した。両場面における敬語使用を明らかにするために、タイ人日本語話者(以下、TNS)と日本語母語話者(以下、JNS)を対象にし、上司と部下による社内会話のロールプレイのデータを用いて、敬語の使用頻度と発話機能に着目し、分析を行った。分析に関しては、部下役のTNSとJNSの発話の中で敬語を抽出し、全体会話と談話構造の開始部・主要部・終了部の各部における敬語の分類と発話機能について分析を行った。敬語の分類項目は、蒲谷・金・吉川・高木・宇都宮(2010)が提示している敬語の分類の項目を一部修正し、【尊敬語】、【謙譲語I】、【謙譲語II】、【丁寧語】、【美化語】、【改まりの表現】という分類項目に沿って分析を行った。談話構造の各部における発話機能の分析枠組みは、鈴木(2009)とDaengsubha(2015)を基に修正を加え、分析枠組みとして用いた。  

本研究の結果に関しては、TNSとJNSによる全体的な敬語使用を見ると、TNSは【丁寧語】を最も多く使用しており、他の敬語の使用は少ないことが明らかになった。それに対して、JNSも【丁寧語】を最も多く使用しているものの、その他の敬語はTNSより多く使用したという結果となった。統計的な有意差が認められたのは、【尊敬語】と【謙譲語I】のみである。また、談話構造の開始部・主要部・終了部の各部の視点から分析すると、両場面の開始部における敬語は、使用頻度と、《状況確認》と《事情説明》に関する敬語の様相が同様な傾向があるという特徴が見られた。主要部では、JNSによる敬語がTNSより多く使用されており、【謙譲語I】には有意差が認められたという結果になった。発話機能に関しては《決意表明》と《理解》の発話に多用されたことが共通点である。終了部では、JNSによる【尊敬語】の使用のみ見られ、【尊敬語】と【謙譲語I】に有意差が見られた。JNSは【尊敬語】を用いて《感謝》を述べたことが確認できたが、TNSにはそういった使用は見られなかった。以上、本研究で得られた結果から、部下役のTNSとJNSによる敬語の使用頻度と発話機能に関する共通点と相違点が明らかになった。

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