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陳 夢晰

2019年6月5日更新

中国人日本語学習者の語彙的複合動詞の意味推測に影響する要因 「文脈情報」と「意味的透明性」を中心に

陳 夢晰
修了年度 2018年度
修士論文題目 中国人日本語学習者の語彙的複合動詞の意味推測に影響する要因 「文脈情報」と「意味的透明性」を中心に
要旨
(1000字以内)

本研究では、未知の語彙的複合動詞の意味を推測する際に「意味的透明性」と「文脈情報」が与える影響について検討した。

まずは、影山(1993;2013)、姫野(1999)の語彙的複合動詞の分類を参照し、調査対象語の 意味的透明性の分類基準を設定した。判断基準に沿って、筆者と語彙研究をしている日本 語母語話者 2 名の計 3 名で意味的透明性の高低に基づいて分類を行った。次に、日本の日 本語学校に在籍している中国人日本語学習者 25 名を対象とし、「文脈なしでの提示」 、「文 脈ありでの提示」の条件下で、調査対象語の意味推測テストを実施した。
調査を実施後、以下の結果が明らかになった。 「文脈の有無」でみると、語彙的複合動詞全体の意味推測の条件ごとの得点を比較したところ、 「文脈あり条件」での正答率の平均値は「文脈なし条件」での正答率の平均値より高い。 「意味的透明性」でみると、 「意味的透明性が高い語」での正答率の平均値は「意味的透明性が低い語」での正答率の平均値より高い。平均値が高いというのは語彙的複合動詞の意味推測の正確さが高いことを示している。

「文脈条件×意味的透明性」の 1 次の交互作用が有意であったため、 「文脈条件×意味的 透明性」について単純主効果の検定を行った。文脈要因の 2 水準における意味的透明性の 影響を検討したところ、文脈なし条件、文脈あり条件下ともに、意味的透明性の主効果は有意であった。
調査結果をまとめると、第一に、学習者が未知の語彙的複合動詞を推測する際、 「文脈からの情報」が意味推測の正確さに影響することがわかった。文脈がなしより、文脈がありのほうが正確に意味を推測できること、第二に、意味的透明性の影響もみられた。学習者が未知の語彙的複合動詞を推測する際、意味的透明性が低い語と比べて、意味的透明性が高い語のほうが正確に意味を推測できることが明らかになった。第三に、意味推測の正確さは「意味的透明性の高低」と「文脈の有無」の関係によって、違いが見られた。①意味的透明性が低い語のほうが文脈からの影響が大きい、②文脈が利用できない場合、意味推測の正確さは意味的透明性からの影響が大きいが、文脈が利用できた場合、意味的透明性の影響は弱くなることが示唆されている。

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