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周 キン茹

2019年6月5日更新

中国人日本語学習者の授受補助動詞の 「非用」と「過剰使用」に関する研究 ―学習環境が与える影響に着目して―

周 キン茹
修了年度 2018年度
修士論文題目 中国人日本語学習者の授受補助動詞の 「非用」と「過剰使用」に関する研究 ―学習環境が与える影響に着目して―
要旨
(1000字以内)
本研究では、中上級中国人日本語学習者(以下、CJL)の「てくれる」文と「てあげる」 文の受容面と産出面における「てくれる」の「非用」と「てあげる」の「過剰使用」に、 学習環境(JFL:Japanese as a Foreign Language, JSL:Japanese as a Second Language)がどの ように影響しているかを明らかにすることを目的とする。  JFL 環境にいる CJL (以下、JFL)を「日本に来たことがなく、中国の大学で日本語を 専攻している学生である」、JSL 環境にいる CJL(以下、JSL)を「中国での日本語学習期 間は 12 ヶ月以内で、日本での日本語学習期間は 6 ヶ月以上の学生である」と定義する。調 査内容は SPOT 調査、授受補助動詞に関する調査(産出テストと受容テスト)、助詞テスト、 アンケート調査とインタビュー調査である。 
  調査を行なった結果、以下のことが明らかになった。産出面では、「てくれる」の使用状 況については、JFL と日本語母語話者(以下、NS)の間および JSL と NS の間には有意差 が見られたが、JFL と JSL の間には有意差が見られなかった。そして、「てあげる」の使用 状況については、相手が目上の人である場合、JFL と JSL の間には有意差が見られなかっ た。しかし、JFL と JSL の間には、NS と比較した際に違いが見られた。相手が同等・目下 関係の人である場合、JFL と NS の間、JSL と NS の間、および JFL と JSL の間に有意差は 見られなかった。受容面では、文における「てくれる」の「非用」に対する容認は、JFL と NS の間および JSL と NS の間には有意差が見られた。しかし、JFL と JSL の間には有意 差が認められなかった。そして、「てあげる」の「過剰使用」に対する容認は、相手が目上 の人である場合、JFL と NS の間には有意差が見られなかったが、JSL と NS の間には有意 差が見られた。また、JFL と JSL の間にも有意差が確認できた。相手が同等・目下関係の 人である場合、「てあげる」の「過剰使用」に対する容認は、JFL と NS の間、JSL と NS の間、および JFL と JSL の間に有意差は見られなかった。   調査結果をまとめてみると、「てくれる」と「てあげる」(相手が同等・目下関係の人で
ある場合)の使用状況については、産出面、受容面ともに学習環境の差による違いは見ら れなかった。しかし、相手が目上の人である場合の「てあげる」の産出面においては、JFL と JSL の間には有意差が見られなかったが、JFL と JSL の間には、NS と比較した際に違い が見られた。受容面においては、学習環境の差による違いが確認できた。 
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