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AYA MOHAMED FATHY MOHAMED ZAGHLOUL

2019年6月5日更新

アラビア語を母語とする日本語学習者の自発的発話に現れるフィラーに関する考察

AYA MOHAMED FATHY MOHAMED ZAGHLOUL
修了年度 2018年度
修士論文題目 アラビア語を母語とする日本語学習者の自発的発話に現れるフィラーに関する考察
要旨
(1000字以内)
本研究は、アラビア語を母語とする日本語学習者を対象とし、学習者の発話におけるフィラーの使用状況(種類、出現数、位置、機能)を明らかにすることを目的とする。ディスカッション形式での調査を実施した結果、本研究で対象としたアラビア語を母語とする学習者8名が使用したフィラーの類型は、山根(2002)の10種の中、学習者が母音型、エート型、コソア型、ナンカ型、マー型、ハイ型、ネー型の7種類のフィラーのみであることが分かった。その中で特に多く使用されたのはコソア型、母音型、ナンカ型であった。また、英語のフィラーも学習者の発話に出現したことが見られた。フィラーの種類に関しては、「あのう」と「なんか」が最も多く使用されているという特徴が見られた。さらにフィラーの位置については、先行研究に沿って発話頭、発話途中、発話末の三つの位置におけるフィラーの使用について分析したところ、最も多く使用された位置は発話中であり、発話頭はそれほど多くはなく、最も少なかったのは発話末のフィラーであった。発話頭に出現したことが見られたフィラーとして、「ええと」「あのう」「なんか」が挙げられる。発話中については、「あのう」「なんか」「ええ」「ええと」「まあ」の5種類について学習者が発話途中に多用する傾向が見られた。また、発話途中には学習者が使用した‘um’、‘er’などの英語のフィラーが出現した。学習者の発話末には発話の終了として機能するフィラーのうち、「はい」や「うん」が見られるとともに、「言い淀み」として使われる「そのう」や「なんというか」などが見られた。フィラーの機能に関しては、本研究の学習者は発話境界を明示する機能、発話権の維持の機能などの機能を伴うフィラーを使用していたことが観察された。一方で聞き手への注意喚起の機能や前の発話の補正の機能でフィラーが用いられる様子は見られなかった。最後に、本研究の調査はディスカッション形式の調査であるため、フィラーの機能を発話権の観点からも考察した。発話権保持を中心とした機能分類の結果では学習者が話者継続、継続中開始、話者交替継続、交替後再開始、説明開始の機能でフィラーを使用する様子が見られた。本研究で明らかになったアラビア語を母語とする学習者のフィラーの使用状況の結果が、中東のアラブの国の日本語教育現場においてフィラーの指導への示唆になればと思う。
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