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ERDENEE BINDERIYA

2019年6月5日更新

モンゴル人留学生を対象としたピア対話による作文活動の試み―言語使用に焦点を当てて―

ERDENEE BINDERIYA
修了年度 2018年度
修士論文題目 モンゴル人留学生を対象としたピア対話による作文活動の試み―言語使用に焦点を当てて―
要旨
(1000字以内)
日本語教育において、「協働」「対話」「参加」といった概念が議論されるようになってから久しい。とりわけ協働学習の一形態であるピア・レスポンス(以下 PR)活動は、多くの教育現 場において実践され、研究成果も蓄積されてきた。しかし、これまでの PR研究が認知的な側 面のみに焦点を当て、学習者同士の相互作用に注目していない(嶋,2015)。また、PR を実施する 際に、学習者の言語使用の設定が難しいと指摘されている(田中,2011)が、言語使用の観点から 分析した研究は少ない。ほとんどの研究は PR をモノリンガル的な視点で、目標言語か母語かの二者択一を経て両者を比較して実施しており、学習者が日常的に行っている自然な言語使用は反映されていない。 
  そこで、本研究ではモンゴル人留学生 2 名を対象に、学習者自身が持つ全ての言語使用を許容したピア対話による作文活動を実施した。そして、作文課題を完成するまでにどのようなリ ソースを何のために使用していたか、学習者はピア対話による作文活動をどのように受け止め、作文活動を通してどのような学びを得たか、を明らかにすることを目的とした。分析データは、ピア対話活動と事前・事後インタビューを、IC レコーダーを用いて録音した。録音したデータ を文字化し、佐藤(2014)のコーディング方法を参考に質的に分析した。分析の枠組みは、加納 (2016b)と広瀬(2015a)を参照し、カテゴリー生成を行った。
  その結果、モンゴル人留学生は、活動時間外では《学習者自身の多言語リソース》、《リソースとしての他者の存在》、《デジタルリソース》を使用していたことが明らかになった。活動時間内のピア対話の際に《学習者自身の多言語リソース》、《他者との協働による学び》そのものをリソースとして使用していたことが判明された。また、ピア対話による作文活動を肯定的に受け止め、《仲間との対話による学び》ができていたことが確認された。この結果は、ピア対話による作文活動を実施する際に、学習者が日常的に行う言語使用の実態に沿って彼らが持つ全ての言語使用を認めたことによると考えられる。また、2 人はピア活動を通して仲間との人間関係や信頼性を構築し、互いに支援し合うことで、自分に対する気づきを得ることができたと考えられる。
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