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張 鋭卓

2018年6月6日更新

トランス・ランゲージングを取り入れた中国人留学生の 日本語アカデミック・ライティング活動
―対象者の言語使用と意識の変化を中心に―

張 鋭卓
修了年度 2016 年度
修士論文題目 トランス・ランゲージングを取り入れた中国人留学生の 日本語アカデミック・ライティング活動
―対象者の言語使用と意識の変化を中心に―
要旨
(1000字以内)

研究目的 

中国人学習者の日本語ライティング教育におけるライティング授業が少ないため指導が受 けられないことと、ライティングで中国語と日本語を統合することができない問題点があげら れた。そのため、本研究はトランス・ランゲージング(TL)を取り入れたプロセス・ジャンル・ アプローチ(PJA)のライティング活動において、在日中国人大学生は日中両言語をどのように方 略的に使うかを明らかにすることを目的とする。

研究課題 

RQ:学生の自律的ライティングを促進させるために、中国人大学生がトランス・ランゲージ ングを取り入れたプロセス・ジャンルライティング活動を行う際、日中両言語を含む記号リソ ースの使用およびそれに対する意識はどのようなものか。また、活動を通じて、変化はあるか。  

RQ(1):対象者は日中両言語を含む全記号リソースをどのように使用していたか。  

RQ(2):ライティング活動を通し、日中両言語および記号リソースの使用について、中国人 大学生の意識はどのように変化していたか。 研究方法  日本の大学に在籍している中国人 A、B を対象として、それぞれに毎回 90 分 7 週間の個別支 援のライティング活動を行った。対象者に「日中の生活習慣から、国民性を見る」というテー マに関して 1、2 ページ程度のレポートを完成してもらい、活動中、TL と PJA を使い、書くス キルを中心に練習してもらった。毎回活動後、30 分程度のインタビューを行った。

研究結果

RQ(1)   対象者が中国語を使った理由は日本語の表現の代用、処理の効率化、補足説明の追加、 正確な意味の伝達、とインプット言語との一致のことであった。一方、日本語を使った理 由は日本で特別な体験及び日常生活の体験、とインプット言語との一致のことであった。 なお、日中混用については書字問題、専門の影響、視覚的な理解のしやすさという理由が あげられた。最後、記号を使った理由は理論の流れの読み取り、情報の速く処理、両言語 の書き方の不明のことであった。

RQ(2)  TL を取り入れ、アウトラインの作成方法を理解したのちには、自ら活用できた。また、 TL を取り入れたアウトラインの書き方の意義について理解ができ、その利便性を認めた。 最後に、TL の活用により、対象者は未知の内容への理解を深めた。

今後の課題 

本研究では、二人を対象とする研究だったため、もっと数多くの対象者で研究を行う必要が ある。さらに、今回は 1 対 1 のライティング支援の形で研究を行ったので、今後は大人数のピ ア・レスポンスを取り入れ、対象者の思考力と言語力の強化にどのような影響を及ぼすかにつ いて、深く研究する必要がある。今回の活動は 2 ヶ月間のみであったため、今後は長期間の活 動を行い、その実施効果を見る必要があると考えられる。

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