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SIMANEE TITIRAT

2018年5月16日更新

身体語彙を含む慣用句の意味推測について
―タイ語母語話者日本語学習者を中心に―

SIMANEE TITIRAT
修了年度 2016 年度
修士論文題目 身体語彙を含む慣用句の意味推測について
―タイ語母語話者日本語学習者を中心に―
要旨
(1000字以内)
本研究では、タマサート大学に在籍している36名のタイ語母語話者日本語学習者(以下TJL)を対象に、身体語彙を含む慣用句の意味推測の実態を明らかにすることを目的とし、「L1との対応」「文脈の影響」「ストラテジーの使用」という三つの観点に基づいて調査を行った。

三つの研究課題を設定し、調査を行った。(1) 異なる慣用句の種類はTJLの推測の得点に影響を与えるか (2) 文脈の有無は、学習者の推測の成功にどのような影響を与えるか (3) TJLが未知慣用句を推測する際に、どのようなストラテジーを使用するか。次に母語との対応関係の観点で、「①形式○概念○」「②形式○概念×」「③形式×概念○」「④形式×概念×」という慣用句の分類を行った。また、思考発話法を用い、文脈あり(18名)と文脈なし(18名)の条件の慣用句問題を実施した。

研究課題1の結果によると、異なる慣用句の種類はTJLの推測の得点に影響を与えることが分かった。文脈ありと文脈なしの両条件下では、「①形式○概念○」は最も推測しやすく、正の転移が生じる傾向があると考えられるが、「②形式○概念×」と「③形式×概念○」を推測した際に、負の転移が生じて成功に推測できなかったことが分かった。「④形式×概念×」は、推測しにくいことが示された。

研究課題2では、文脈の有無は、TJLの推測の成功に影響を与えると言える。特に文脈なしの条件は、文脈ありの条件より意味推測の得点が非常に低かったため、文脈はTJLの推測を促進することが分かった。

研究課題3では、TJLが未知慣用句を推測する際に、文脈があるかどうかにかかわらず、ストラテジーを組み合わせて推測を行っていた。一つの慣用句を推測するのに対して、複数のストラテジーを用いることが多かった。

上記の本研究結果に踏まえて、目標言語の「形式」と「概念」の共通点と相違点に気付かせることによって、慣用句の意味推測を促進することを示唆した。特に母語に対応する「形式」と「概念」がない場合は、それについて注意を向けさせることによって、理解しやすくなるだろう。しかし、それを意識させることだけではなく、慣用句の理解を高めるためには、異文化の理解、異文化に対する意識を高めることも欠かせないと考えられる。さらに、推測ストラテジーの共有や学習者にストラテジーを用いて慣用句を推測させる練習も重要であると考えられる。

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