お茶の水女子大学
日本文化研究の国際的情報伝達スキルの育成
コンソーシアム・シンポジウム一覧
コンソーシアム(平成19年度)
 
(1)
プログラム
開会式
7月5日(土) Session1
「人類・食・文化」
7月6日(日) Session2
「源氏物語の千年」
煎  酒
(2)午前の部 (3)午後の部 (4)研究発表 (5)パネル (6)復 元 (7)試 飲


 7月5日(土)第1日目
【Session1】人類・食・文化 (午前の部〈講演〉) 


 まず、本セッションを設けることになった趣旨を説明したい。
 「食」は人間にとって最も根本的で身近な問題である。現在、世界中で「食」に対する関心がますます高まりつつある。日本においても、「食」に関する諸問題が、食料自給率をはじめ、栄養問題など、国家政策から生活面にいたるまでさまざまに議論されている。これらの議論の背景には、西洋科学文明の行き詰まりによる環境問題の深刻化やライフスタイルの変化などがあり、現代社会は文明の大きな転換点に立っていると言える。
 こうした「食」の現代的課題を解決し世界に発信していくためには、世界的な視点で日本の「食」の問題を考えていくことが重要であるし、一方、従来の方法論とは異なる新しい視点で、「食」の問題に対処していくことが必要だと考えられる。数量化に象徴される栄養科学の視点からだけではなく、人文学からの視点を複合的に総合した文理融合の視点によってこそ、「食」の問題解決に向かうことができると言えよう。また、現代的課題を解決するにあたっては、現代だけを考えるのではなく、日本の食文化を歴史的に見直していくことによって、その手がかりを得ることができると考えられる。 本学の比較日本学教育研究センター主催の国際日本学シンポジウムも第10回となり、記念の年を迎えた。今年度は、文部科学省が行っている大学院教育改革支援プログラムに本学から採択された「日本文化研究の国際的情報伝達スキルの育成」との共催である。本学では国際日本学、比較社会文化学分野の研究者と食物栄養学分野の研究者が合同で「食」についての研究プロジェクトを立ち上げて、教育面でも文理融合リベラルアーツの中で、「色・音・香」という授業を合同で担当している。
 このような本学の取り組みの一環として、今回の国際日本学シンポジウムにおいて、「人類・食・文化」のセッションを設けることになった。午前の部においては、世界の食文化をリードするフランスから専門家の方をお招きし、世界的な視点から「食」と文化の問題について、また、文理融合の視点から人間と「食」の問題についてお話ししていただく。
 そして、午後の部においては、日本の主食と言える「米」とこれまた重要な食糧である「雑穀」の関係について、「米と雑穀の日本文化」というテーマでシンポジウムを行う。これは、米と雑穀について、文理融合の視点をいかしながら、歴史的に日本文化を見直していくことによって、「食」の現代的諸問題解決の手がかりを得ようとするものである。
 午前の部にも途中で質疑応答の時間を設け、最後には報告者全員によるパネルディスカッションを行い、さまざまな角度から、「米と雑穀の日本文化」について考察することにしたい。

【午前の部】(10:30−12:45) 講 演

1.フランソワーズ・サバン (日仏会館フランス学長、中国史)
「食物、人間、そして神聖なるもの」
「宗教を語るものは食事を語る」
人間は、食物を道具化することによって、神聖なるものに到達し、神聖なるものと融合しまたはそれと一体化する。また、付随的に、自分を隣人から区別する。

2.マクシム・シュワルツ (パスツール研究所名誉所長、元フランス食品衛生安全庁ディレクター、分子生物学)
「農業害虫の生物的防除―パスツールから遺伝子組み換え作物まで―」
パスツールの微生物による昆虫の個体数コントロールは、遺伝子組み換え作物開発の道を開いた。人類は何世紀にもわたる努力の末、遺伝子組み換え作物によって、害虫に耐性を持つ作物を栽培できるようになった。遺伝子組み換え作物の使用については論争が続いているが、遺伝子組み換え作物は、世界の食糧生産問題に関して大いなる可能性を提供するものである。

【午後の部】(14:00−18:00) シンポジウム「米と雑穀の日本文化」

1.シャルロッテ・フォン・ヴェアシュア (フランス国立高等研究院教授、日本史)
「古代日本人は米をどれぐらい食べていたか」
古代人の米消費は、土地の広さと地質、地理的所在場所、家族の構成などによって、大きく異なり、1:4もの大差があった。しかし、平均としては、1年に4分の1(25%)ぐらいは米を食べていたのではないかと考えられる。

2.香西 みどり (お茶の水女子大学自然・応用科学系教授、調理科学)
「日本の米と食文化」
日本に伝来した米は温帯ジャポニカ種といわれる比較的寒さに強いもので、稲作には大量の水と、耕作技術を必要とした。日本人の食事文化は、米に執着したもので、穀類を用いた穀醤類の調味料が発展し、ブタなどの食用家畜が欠落していた。

3.増田 昭子 (立教大学文学部講師、民俗学)
「雑穀の社会史」
日本社会における雑穀の重要性を主張する。
1961年の農業基本法によって、農業の多様性が否定された。しかし、農業の多様性を維持することによって、食糧自給率をあげ、食材独自の味を楽しむためにも、雑穀を栽培し、「農と食」の多様性文化を奨励するべきである。

【パネルディスカッション】

木村茂光 東京学芸大学教授(日本史、畑作・雑穀の研究者)
日本人は米をどれぐらい食べていたのか、について時代による違いはあるのか?
戦争の時代に米が普及することが、中世でも近代でも知られている。
日本では古代の新嘗祭でも、米の新嘗だけではなく、稗の新嘗も行われており、年中行事には雑穀が多く使われている。

三浦徹 お茶の水女子大学理事(イスラム史)
サバン氏の講演をうかがうと、米や麦などの主食にはタブーが見られない。
日本人はなぜジャポニカ種の米に執着したのか。

香西みどり お茶の水女子大学教授(調理科学)
ジャポニカ種の栽培には大量の水が必要で、日本の風土に合った。また、ねばりのある味が日本人には好まれた。

ま と め:

 本日のシンポによって、雑穀の重要性がよくわかったが、日本ではジャポニカ種の米が好まれ、古代から近世にいたるまで、米が税金として選ばれたことも確かである。今回のシンポを第一歩として、米と雑穀について今後も研究を進めていきたい。

【文責 古瀬奈津子】
(2009/02/05up)



1.フランソワーズ・サバン氏(日仏会館フランス学長、中国史)
食物、人間、そして神聖なるもの


    ロール・シュワルツ=アレナレス本学准教授による講演者紹介。


    講演中のフランソワーズ・サバン氏。左は翻訳担当・中村俊直本学教授。



    質疑応答(特定質問者:斎藤真希(博士後期課程学生・倫理思想))




2.マクシム・シュワルツ氏(パスツール研究所名誉所長・元フランス食品衛生安全庁、分子生物学)
農業害虫の生物的防除―パスツールから遺伝子組み換え作物まで―



    質疑応答(特定質問者:島村裕子(本学人間文化創成科学研究科研究員))




(2008/07/16up)

(1)
プログラム
開会式
7月5日(土) Session1
「人類・食・文化」
7月6日(日) Session2
「源氏物語の千年」
煎  酒
(2)午前の部 (3)午後の部 (4)研究発表 (5)パネル (6)復 元 (7)試 飲