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PHANKHIAN CHATPORN
2026年6月1日更新
語彙的アスペクトが「ている」の習得に与える影響―タイ語母語話者を対象として―
PHANKHIAN CHATPORN
| 修了年度 |
2025年度 |
| 修士論文題目 |
語彙的アスペクトが「ている」の習得に与える影響―タイ語母語話者を対象として― |
要旨
(1000字程度) |
近年、タイ語を母語とする日本語学習者(以下、TNS)は増加している。しかし、テンス・アスペクト形式である「ている」の習得状況は十分に明らかにされていない。特に「ている」には「動作の持続」と「結果の状態」の用法があり、後者は多くの学習者にとって習得が難しいとされる(Shirai & Kurono, 1998 ; 許, 1997 ; 小山, 2003 など)。しかし、「結果の状態」の習得においては、母語によって難易度の差がある(菅谷, 2016)。
アスペクト仮説によれば、進行形は活動動詞、過去形は到達動詞と強く結びつくため、「結果の状態」の習得は特に困難であるとされている(Shirai & Kurono, 1998)。TNS の中・上級者も同様の困難を示すことが報告されている(ドゥアンケーオ, 2016)。しかし、母語(以下、L1)と第二言語(以下、L2)における語彙的アスペクト(Vendler, 1967)の一致・不一致が「ている」の習得に与える影響を検証した研究はほとんどない。
そこで、本研究では、RQ1「TNS にとって「結果の状態」が「動作の持続」より難易度が高くなるか」、RQ2「TNS の日本語の習熟度が上がれば「ている」の習得が進むか」、RQ3「タイ語と日本語の語彙的アスペクトの違いは習得難易度に影響するか」の 3 点を設定し、アスペクト仮説の枠組みの下で検討した。
調査対象者は TNS 44 名と日本語母語話者 30 名である。TNS は SPOT90 に基づき、上位群と下位群に分類した。調査タスクの動詞項目については、 Shirai(2013)を参考にタイ語動詞を分類した。さらに、Nishi & Shirai(2019)が示した L1 と L2 の語彙的アスペクトの一致・不一致の対応関係のカテゴリを参考に、本研究における動詞タイプを設定した。調査タスクとして、全 32 問の口頭産出課題を実施した。
分析の結果、RQ1 では「動作の持続」の得点が「結果の状態」より有意に高く(p<.001)、後者の習得困難性が確認された。RQ2 では習熟度群間に有意差はなかったが、SPOT90 の得点と正答率には正の相関がみられた。RQ3 では、「落ちる」タイプが「乗る」タイプ、「知る」タイプより有意に低く、語彙的アスペクトの不一致が習得難易度に影響することが示された。以上より、本研究ではアスペクト仮説が支持されるとともに、その普遍性の中で、母語としてのタイ語の影響が見られた。
今後の課題としては、他母語話者との比較に加え、TNS に対して動詞タイプによる難易度序列を明示した指導法への応用がより効果的であると提案する。
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