ページの本文です。
張 鈺(ZHANG YU)
2026年6月1日更新
日本語の日常会話における話題転換の分析―「フレーム理論」と「指標性」に基づいて―
張 鈺 (ZHANG YU)
| 修了年度 |
2025年度 |
| 修士論文題目 |
日本語の日常会話における話題転換の分析―「フレーム理論」と「指標性」に基づいて― |
要旨
(1000字程度) |
本研究は、日本語の日常会話における雑談を対象とし、話題転換がいかにして相互行為の中で達成されているのかを明らかにすることを目的とする。従来の話題転換研究では、日本語母語話者と日本語学習者といった二分法的枠組みに基づき、話題転換の円滑さや不自然さが個人の言語能力や運用能力に帰属される傾向があった。しかし、実際の会話では、同様の言語的・文化的背景を共有する話者同士であっても、話題転換が滞ったり違和感が生じたりする場面が見られる。このことから、話題転換を話者属性の問題としてではなく、相互行為の過程として捉え直す必要があると考えられる。
本研究では、話題転換を単なる話題内容の切り替えとしてではなく、「いま何が行われているのか」という相互行為上の理解枠組みが再構築される局面として位置づけ、フレーム理論および指標性の概念を理論的枠組みとして採用した。具体的には、話題転換がどのような言語的・非言語的資源を通じて達成されているのか(RQ1)、また参与者間の関係性や立場、活動理解といったフレームがどのように再定位されているのか(RQ2)を検討した。
分析対象として、中国語を母語とする話者 1 名と日本語を母語とする話者 1 名による雑談を Zoom で収集し、計 6 回の雑談のうち、映像条件が安定していた 4 回分を分析対象とした。データを文字化した上で、話題転換における相互行為の展開を質的に分析した。
分析の結果、雑談における話題転換は、相づち、沈黙、身体動作などの言語的・非言語的資源が段階的に配置される移行局面として達成されていた。これらの資源は、相互行為上の理解枠組みを指し示す指標的資源として機能し、話題転換に寄与していた。こうした指標性を通じて、話題転換の局面では、会話進行の主導性や関係性の非対称性が局所的に前景化することが確認できた。一方で、話題転換は同時に、「いま何をしているやり取りなのか」という活動理解を再編成する契機となり、活動フレームが更新・共有されていく様相が観察された。すなわち、話題転換は関係性を恒常的に変化させる契機ではなく、参与者が指標的資源を用いながら、相互行為の主導性、関係性フレーム、活動フレームを局所的に立ち上げ、調整・再定位していく相互行為的実践として機能していると捉えられる。
以上より、本研究は、話題転換を固定的な基準によって判定される現象としてではなく、参与者が指標的資源を用いて相互行為の枠組みを可視化し、調整していく過程として捉える視点の有効性を示した。
|
-
-
-
-