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CHU THI HAI YEN

2026年6月1日更新

第二言語としての日本語の移動表現の習得―ベトナム人日本語学習者を中心に―

CHU THI HAI YEN    
修了年度 2025年度
修士論文題目 第二言語としての日本語の移動表現の習得―ベトナム人日本語学習者を中心に― 
要旨
(1000字程度)

 「話すのための思考(Thinking for Speaking, TFS) 」によると、言語使用中、言語の特有の文法構造は出来事への話者の注意と見方に影響することが主張されている(Slobin, 2004; 2006)。つまり、学習者はL1に基づく出来事の捉え方で、L2の文法を用いて出来事を描写する傾向があることが示唆されている(Slobin, 2004; 2006)。ベトナム語を母語とする日本語学習者は、L1とL2の文法の違いにより、出来事をベトナム語の捉え方のまま、日本語で表現する傾向があると指摘されている。本研究は、TFSにおける重要な課題である「移動表現」に着目し、Talmy(2000)の語彙化パターンの類型論を基に分析を行う。ベトナム人日本語学習者による日本語の移動表現の使用実態を明らかにすることを目的とする。 

 本研究は、動画を用いた言語産出調査の研究方法を採用に、移動表現の中心的構成要素である「様態」と「経路」に焦点を当て、学習者の習熟度との関連性についても検証した。調査参加者は、ベトナム語母語話者30人、日本語母語話者30人とベトナム人日本語学習者40人である。 

 分析の結果、様態表現に関して、ベトナム人日本語学習者は日本語母語話者よりも高い頻度で様態動詞を主動詞として語彙化する傾向が確認された。これは、L1 の語彙化パターンが影響しており、L2 の様態動詞の語彙化パターンは学習者にとって習得が難しい項目であることを示している。一方、経路表現については、経路動詞の語彙化において母語と日本語の構造的共有性が学習を促進したと考えられる。しかし、学習者の産出には、日本語母語話者と比べて経路動詞の産出が低く、副詞的経路に依存する傾向が見られた。この点は、L1 と L2 の相違に起因すると考えられる。 

 さらに、習熟度との関連を検討した結果、日本語の習熟度が上昇するにつれて、学習者の語彙化パターンは日本語母語話者に近づく傾向が確認された。しかしながら、様態動詞の語彙化パターンについては、習熟度が高い学習者であっても完全な習得には至っておらず、L1 の影響が強く残存する領域であることが明らかとなった。また、習熟度は語彙化パターンの習得だけでなく、移動表現全体の産出頻度にも影響を及ぼすことが示され、学習者の表現力の幅そのものが習熟度に左右されることが確認された。 

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