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山口 明子

2018年5月16日更新

台湾人留学生のレジリエンスが日常生活ストレスと災害不安による非日常的なストレスに及ぼす影響

山口 明子
修了年度 2016 年度
修士論文題目 台湾人留学生のレジリエンスが日常生活ストレスと災害不安による非日常的なストレスに及ぼす影響
要旨
(1000字以内)
留学生活においては言語、文化、学業などで様々なストレスを経験すると考えられる。自然災害の多い日本では、地震災害に対する不安も災害弱者になる可能性がある留学生にはストレスになりうると考えられる。留学生が持つこれらのストレスをどのように抑制、緩和できるかは検討すべき課題であると言える。

本研究ではストレスに対して「逆境に直面した時にうまく適応する力」とされているレジリエンスに着目し質問紙調査をもとに統計的分析を行った。対象者は環境や社会は日本と共通するが言語と文化は異なる台湾人留学生とした。

研究課題1では、台湾人留学生のレジリエンスがどのようなものか検討するために信頼性分析を行った。信頼性分析には、「資質的要因」、「獲得的要因」の下位尺度から構成される二次元レジリエンス要因尺度(平野, 2015)を用いた。

研究課題2では、日常生活ストレスと災害不安による非日常的なストレスがどのようなものかについて因子分析により明らかにした。因子分析の結果、日常生活ストレスでは〈経済状況の不安定さ〉、〈日本語使用上の難しさ〉、〈将来への悩み〉、〈人間関係における疎外感〉、〈日本文化・習慣に対する違和感〉の5因子が、災害不安による非日常的なストレスでは〈一般的な不安〉、〈外国人対応への不安〉、〈地震発生後の不安〉、〈家族・友人間の安否確認〉、〈日本滞在に対する不安〉、〈日本語情報に関する不安〉、〈情報収集・伝達に関する不安〉の7因子が認められた。

研究課題3では台湾人留学生のレジリエンス要因とストレスとの関連を検討するため、レジリエンス要因と属性を説明変数、日常生活ストレスと災害不安による非日常的なストレスを基準変数とするステップワイズ法による重回帰分析を行った。日常生活ストレスに対してはレジリエンス要因〈楽観性〉、〈自己理解〉、〈他者心理の理解〉の有意な影響が認められ、後天的に獲得できるとされるレジリエンス要因〈自己理解〉については負の影響が多く見られた。また、災害不安による非日常的なストレスに対してはレジリエンス要因〈楽観性〉、〈統御力〉、〈自己理解〉の有意な影響が認められ、生得的な特性と関連が高い〈楽観性〉については負の影響が多く見られた。

以上のことから、レジリエンスを高める支援が、留学生のストレス軽減につながる可能性が示唆された。

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