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朴 惠仁 (PARK HYEIN)

2018年5月16日更新

日韓多義動詞「あがる」「さがる」と「오르다(Oruda)」、「내리다(Naerida)」の意味拡張に関する対照研究
―上下メタファーに基づいて―

朴 惠仁 (PARK HYEIN)
修了年度 2016 年度
修士論文題目 日韓多義動詞「あがる」「さがる」と「오르다(Oruda)」、「내리다(Naerida)」の意味拡張に関する対照研究
―上下メタファーに基づいて―
要旨
(1000字以内)
第二言語学習者にとって特に理解困難とされている多義動詞の正しい理解を促すためには、その多義動詞の意味拡張を詳しく検討する必要がある。本研究は日本語と韓国語の多義動詞の意味領域のずれとその原因を明らかにし、学習者による多義動詞の理解の一助になることを目指した。そのため、韓国語の「오르다()」「내리다()」の意味拡張と、その対称性と非対称性を明らかにし、日本語の「あがる」「さがる」と対照分析することを目的とした。

本研究では「あがる」「さがる」と「오르다()」「내리다()」の意味拡張を体系的に分析することができるLakoff & Johnson(1980)の「上下メタファー」に基づき分析を行った。その分析結果を、森山(投稿中)の「あがる」「さがる」の意味拡張と対称性・非対称性の分析結果と対照した。日本語の意味拡張は森山(投稿中)の結果を用いて分析し、韓国語の意味拡張は、森山(投稿中)と同レベルのコーパスを用いて分析した。

分析の結果、学習者が一対一対応していると考えやすい「あがる」「さがる」と「오르다()」「내리다()」の意味拡張は大きく異なることが分かった。日本語も韓国語も、意味拡張の範疇は「空間」「出現」「時間」「数量」「評価」「完了」「支配」に分けられていたが、その下位範疇に違いが多く、韓国語で新しく設けたカテゴリーや、韓国語では用例が見当たらなかったカテゴリーが多く存在した。また、「あがる」「さがる」と同様、「오르다()」「내리다()」も対称性よりもその非対称性が目立っていた。非対称的であるカテゴリーの特徴として、第一に、「오르다()-내리다()」の対ではなく別の対で表現される場合があること、第二に、上方移動が存在しないため、下方移動の一方向的移動の場合があることが分かった。

本研究は、これまで明らかになることはなかった日韓の多義動詞「あがる」「さがる」と「오르다()」「내리다()」の意味拡張及びその対称性・非対称性を明らかにし、日韓で異なる結果になった原因までを考察したことに意義があると考えられる。そこから、韓国語を母語とする日本語学習者はもちろん、日本語を母語とする韓国語学習者の「あがる」「さがる」と「오르다()」「내리다()」の学習に役立つ研究であると考えられる。

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