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NGUYEN THI HONG NGOC

2018年5月16日更新

初対面会話における話題選択と話題選択ストラテジー
―ベトナム語母語話者大学生と日本語母語話者大学生を比較して―

NGUYEN THI HONG NGOC
修了年度 2016 年度
修士論文題目 初対面会話における話題選択と話題選択ストラテジー
―ベトナム語母語話者大学生と日本語母語話者大学生を比較して―
要旨
(1000字以内)
近年、ベトナム人日本語学習者数は4万6千人に上っており、他方、ここ数年、ベトナム人留学生は増加し、中国に次いで第2位である(Jasso,2015)。ベトナム人日本語学習者は日常生活でも日本人との初対面会話はよくあると考えられる。三宅(1994)では、日本人は「疎の相手」と付き合う際、他者との一定の距離を保持する傾向が見られたとしている。しかし、ベトナム人は、「家族主義」の影響が強く、初対面の人に対しても、相手の情報を要求し、相手の状況を把握した上で、自分の家族のように関心を示したいという特徴がある(Phuong,2011)。このような異文化背景を持つ日本人とベトナム人の初対面場面では、ミスコミュニケーションが生じることが多々あると推測される。

佐々木(1998)は、「初対面での状況は新しい人間関係を築くための第一歩であり、話者にとって重要な意味を持つ」という。また、初対面場面においては、話題選択は強く意識され、重要項目とされている (三牧,1999; 三牧,2008; 田所,2013)。また、三牧(1999)は、初対面場面において沈黙は可能な限り回避し、話題が途切れないような話題選択ストラテジーが重要だと指摘している。そして、宇佐美(1996)では、初対面の会話における言語行動には、対話相手に応じた話題導入の仕方やその頻度等の会話のストラテジーが用いられていることが明らかになった。本研究は、ベトナム語母語話者大学生(以下VNS)と日本語母語話者大学生(以下JNS)を対象とし、同性同士及び異性間の同国人同士での初対面会話における両者の話題選択と話題選択ストラテジーを明らかにする。

その結果、話題項目に関して、VNSとJNSともに、共通して選択される話題が多かった。しかし、JNSと比べ、VNSは平均話題数が多く、話題の種類も多様であることが分かった。VNSは全く新たな話題を取り上げる傾向があるのに対し、JNSは前の話題と関連する話題を取り上げる傾向が多く見られた。そして、話題選択ストラテジーについては、これまでの先行研究の結果と異なり、「危険な話題」を使用することが明らかになった。初対面の相手との会話を行う際、会話が途切れないよう、さらに会話を円滑に進行させるため、越日ともにポジティブ・ポライトネス・ストラテジーとネガティブ・ポライトネス・ストラテジーの両方を駆使することが分かった。

上記に述べてきた結果が今後増え続けると予想されるベトナム人日本語学習者に対する日本語教育そして越日のコミュニケーションに新たな情報を提供できることが期待される。

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