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髙木 瑞穂

2018年5月16日更新

フランスの大学生の日本語学習動機と学習困難度との関連について

髙木 瑞穂
修了年度 2016 年度
修士論文題目 フランスの大学生の日本語学習動機と学習困難度との関連について
要旨
(1000字以内)
フランスの高等教育機関における日本語教育の大きな問題点として挙げられるのが中途退学者の多さである。先行研究では、フランスの国立大学日本学科の進級率の低さ、日本語学習の放棄、在学中の日本語学習と卒業後の職業の分断と日本語コースの受講者の定着率の悪さが指摘されている。前進を阻む要因として、教材、教育メソッド、教師、施設設備の不足などが挙げられており、日本語自体の難しさとともに学習環境が要因で日本語学習継に困難を感じる人が多いのではないかと予想される。フランスは、ヨーロッパにおいて最も日本語学習者数の多い国であり、学習動機に関するアンケート調査などは行われているが、統計的分析による調査はこれまでほとんど行われていない。また、日本語習得過程における学習困難度の調査に関する研究は僅少であり、今後も様々な地域において検証を行う必要がある。そこで、本研究はフランスの大学生の日本語学習動機と学習困難度を調査し、その関連を明らかにするため、フランスの大学生日本語学習者202名を対象に、質問紙調査を行った。

その結果、学習動機として、〈将来への有用性〉〈日本への関与〉〈日本語興味〉〈日本語資源へのアクセス〉〈交流志向〉〈文化理解〉〈学術研究〉〈過去の日本語学習経験〉の8因子、学習困難度として、〈日本語の発音・発話不安〉〈教師との葛藤〉〈漢字学習の負担〉〈学習者間の葛藤〉〈接触機会の欠如〉の5因子が得られた。学習困難度は、学習動機と属性から影響受けており、学習動機〈日本への関与〉と属性〈日本語能力〉が、学習困難度〈日本語の発音・発話不安〉と〈接触機会の欠如〉へ負の影響を与えていることが認められた。

さらに、学習動機と属性が学習困難度にどのような影響を及ぼしているのか検討を行った結果、〈日本語の発音・発話不安〉には、〈日本への関与〉〈文化理解〉〈日本語能力〉の負の影響、〈交流志向〉と〈年齢〉の正の影響が認められ、学習困難度〈学習者間の葛藤〉には、〈将来への有用性〉〈日本語資源へのアクセス〉の正の影響、〈日本語興味〉の負の影響が認められ、学習困難度〈接触機会の欠如〉には、〈日本への関与〉〈日本語能力〉の負の影響が認められた。以上の結果、〈日本への関与〉と〈日本語能力〉が学習困難度〈日本語の発音・発話不安〉と〈接触機会の欠如〉の2因子に影響を及ぼしており、〈日本への関与〉動機を促し、日本語能力を向上させることが学習困難度の低減につながることが示唆された。
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