専門分野は、社会保障法・政策、高齢者福祉。



非正規労働者の賃金はなぜ低いのか。その主要な要因は、正規労働者と非正規労働者は労働市場を異にすることにある。企業の内部労働市場に属する正規労働者に対しては日本型雇用慣行に基づく企業独自の人事・賃金制度が適用され、日本的能力主義による職能評価と年功的処遇によって賃金が決定されてきた。これに対して外部労働市場におかれた非正規労働者の賃金は、労働市場での世間的相場を反映して決定され、職種別・地域別市場賃率とは言われるものの、その賃金水準は、同一職種の正規労働者の賃率が適用されるわけではない。この低賃金のベースにあるのが「主婦パート」の家計補助的賃金相場で、これに従って今日の非正規全般の低賃金が規定されている。1997年の金融経済危機以降、グローバル競争の進展の中で、コスト高の「男性稼ぎ主」賃金とフレキシビリティーを欠く長期雇用が企業にとって時代不適合となり、その賃金コスト削減のため、非正規雇用化が強力に進められてきた。
公正な賃金制度にしなければいけないと思う。ただし、唯一望ましい賃金制度が存在するわけではない。また、無期(正社員)・有期、フル・パートの処遇差の中で、合理的に説明ができない格差がどのぐらいかというのはなかなか難しい。不合理な格差はまず解消すべきだが、パート労働者の職業能力が高まるようなキャリアラダーをつくるとか、能力開発機会を提供しないと、全体としての賃金水準は上がらないと思っている。
株式会社JSOLでは2006年に女性社員が働きやすい職場作りを目指して女性活用諮問委員会を設立(2012年度よりWoman’s committeeへと発展)。銅伝氏は同委員長を務める傍ら、名古屋営業支社長のベースを活かし、中部地区を中心として女性の活躍推進に関する講演活動を行ってきた。中部地区における取り組みとしては「中部ダイバーシティnet」があり、製造業分野の企業を中心に67企業・団体が所属、企業を超えた情報交換や女性を対象とした研修が企画されている。行政も女性活躍を支援するための取り組みを始めており、名古屋市には「女性の活躍推進企業認定・表彰」、「子育て支援企業認定・表彰」等独自の制度が整備されている。行政表彰を受けた企業は入札時に有利になるなどのインセンティブがあることも、制度の実効性を高める上で重要な点である。
著書
◆日本の労働者派遣法は悪法である
◆基幹化するパート労働者
◆崩れる日本的雇用慣行
◆「均等待遇」をめぐる法政策―日本の非正規労働法制の動向
日時2012年7月2日(月)18:00~21:00
統計データを用いながら、米国における女性の就業の変化について説明。女性が男性に比べ教育水準が高いこと、労働市場参加の男女差はほぼ均衡なこと、明白な雇用差別は縮小しているものの、シングルマザーが多いことや出産年齢は上昇していることが挙げられた。

講演者の報告にあったように、女性への家事・育児負担の偏りが男女の賃金格差につながっているのは、日米共通の課題であることがわかった。日本のWLB政策としては、育児休業法や労働基準法の改正により、男性の育児参加促進、長時間労働の抑制を進めている。ワーク・ライフ・バランス行動指針に3つの柱があり、その一つに、シングルマザーの経済的自立のための就業促進も入っている。
2012年7月1日(日)10:00~18:00
家族的責任をとる労働者に対する法政策
■「日米父親のワーク・ライフ・バランス~家事・育児参加の視点から~」
お茶の水女子大学教授 石井クンツ昌子 氏