本研究は6歳以下の子どもをもつ有配偶の父親を対象に、妻から育児や家事への参加を期待されること、そして父親自身の就労意識によって父親の育児や家事参加が増えるのかという点について日米比較を通じて明らかにすることを目的としている。研究において援用するマターナル・ゲートキーピング(Allen and Hawkins 1995)という概念は、父親である夫に対して妻が育児や家事への参加を促すことや、反対に妻が家事や育児を行ってしまうため、結果として夫の育児・家事参加を抑制させるという妻の役割を指す。対象は、末子6歳以下であり育児項目に回答している父親データ日本の父親457名、米国の父親768名である。
パス解析による日米の多母集団分析の結果、第一に父親の家族を優先する就労意識の強さは、日米の父親ともに育児・家事参加をより多くしていることが明らかになった。第二に妻から夫へのマターナル・ゲートキーピングとしての育児・家事参加への期待認識が、日米の父親ともに妻からの期待を認識することで育児や家事参加を多くしている。第三には、妻が家庭役割を担うべきという妻の家庭役割意識が強いほど日米の父親は育児参加頻度が少なくなっているが、日本の父親だけが妻への家庭役割意識が強いほど家事参加頻度が抑制され少なくなっている。一方で米国の父親だけが父親の家計分担比率が多いほど育児・家事参加頻度が少なくなっているが日本の父親ではその関連性は見られなかった。この三点の他に日米の職場要因として共通していた点は通勤勤務時間が長いほど育児参加が少なくなるという点であった。