学会報告

2010年度

比較家族史学会

uta

日時 2009年11月28日
場所 早稲田大学(東京都新宿区)
概要
「妻のワーク・ライフ・バランスの事例研究~子どものいる共働き家族と子どものいない共働き家族」
山谷 真名  労働班
お茶の水女子大学ジェンダー研究センター アソシエイト・フェロー
共働き家族を、夫婦制家族と合意制家族の軸と夫婦制家族を前提とした職場と合意制家族を前提とした職場の2軸によって4類型に分類した。合意制家族で合意制家族を前提とした職場に分類された共働き家族には子どもがおり、夫婦制家族で夫婦制家族を前提とした職場に分類された共働き夫婦のほとんどが子どものいない夫婦であった。妻がワーク・ライフ・バランスを取ることができ、それによって子どもを持つことができるようになるためには、合意制夫婦に転換し、職場もそういった合意制夫婦を前提とした、育休などを取得しやすい環境にならなければならない。
「夫のワーク・ライフ・バランスの事例研究~共働き家族と専業主婦家族~」
林 葉子   家族班
お茶の水女子大学ジェンダー研究センター リサーチ・フェロー
夫の家事・育児参加の程度を、家族ライフスタイル論を用いて分析し、共働き家族と専業主婦家族で比較した。専業主婦家族は、仕事志向型夫と子育て中心型夫に分けられた。また、共働き家族には、仕事志向型の夫と協力志向型の夫に分けられた。専業主婦家族においても、子育てを重視する夫は、育児に参加しようという姿勢が仕事志向型より見られたが、ワーク・ライフ・バランスは主に、家族単位で実現していた。一方で、協力志向型夫は共働き家族のみにみられた。このタイプの夫のワーク・ライフ・バランスは、夫個人においても実現しようさせようと努力している姿勢が見受けられたが、まだ、長時間労働から解放されていないため、意識の段階にとどまっている。
「ワーク・ライフ・バランス政策~日韓比較」
申 琪榮 法政策班
お茶の水女子大学 人間文化創成科学研究科 准教授
韓国と日本におけるワーク・ライフ・バランス政策は、他の先進国より、少子化対策として打ち出された点においては共通している。しかし、韓国では、ワーク・ライフ・バランス政策を、男女雇用平等法と結びつけて、労働と生活面において家族責任を持つという観点から捉えている点で大きな相違がある。韓国におけるワーク・ライフ・バランス政策は、労働政策の一部として始まったばかりであり、保育支援は貧困家庭の保育費補助として機能しているため、制度の実効性はまだ、確保されていない。また、日本と同様、制度の利用による男女格差の解消が課題となっている。
「フランスのワーク・ライフ・バランスの法政策」
神尾 真知子 法政策班
日本大学法学部 教授
フランスにおいて、ワーク・ライフ・バランスに相当する政策は、「職業生活と家庭生活の調和政策」であり、家族政策と深くかかわっている。職業生活と家庭生活の調和政策では、どのように子どもを育てるのかについての単一の家族モデルを国は設定しておらず、様々な家族の子育てニーズに応える政策をとっている。したがって、政策理念は、人々の「選択の自由」を保障することである。多様な保育サービスが展開され、かつ、その選択において発生する経済的負担を軽減するような所得保障(家族給付)や税控除が行われている。
家族社会学会
日時 2009年9月13日
場所 奈良女子大学(奈良県奈良市)
概要
「日本的雇用慣行と夫婦関係-なぜ夫婦正社員という選択が増えないのか」
発表者 永瀬 伸子 労働班
お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科 教授
本稿は、日本の大企業の夫婦マッチデータを用いて、夫と妻の夫婦関係満足度、生活満足度を、妻の働き方別に推計したものである。興味深いことに、夫の夫婦関係満足は、欧米と異なり妻が専業主婦の場合に有意に高い結果が得られた。また妻の生活満足は、夫の夫婦関係の認識から直接の影響を受けるという特徴が見られた。日本において、欧米諸国と異なり、女性の出産育児期の就業継続が増えていないが、これは、大企業の正社員雇用の夫が妻の就業を積極的に評価しないこと、そのことを妻が感じ生活満足が下がることが一因と思われる。もっともデータは35歳以上であるので新しい世帯の認識についてはこれからの研究課題である。
日本経済学会
日時 2009年6月6日
場所 京都大学(京都府京都市)
概要
「若者は景気回復期に安定雇用に移行できたのか」
発表者 永瀬 伸子 労働班
お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科 教授
水落 正明 労働班
三重大学人文科学科 准教授
『労働力調査』の個票を用いて、企業の採用意欲が回復しつつあった2002年度-2007年度のデータを用いて、若者が初職に安定雇用に就けるようになったかどうか、また無業やアルバイトに就いたとしても、どの程度正社員に移行できるようになったか、さらにパート・アルバイト経験が長いことは賃金率にどのような影響を与えるかについて計測した。多変量解析の結果、学歴が高いほど、またパート・アルバイトに就いているよりは、派遣社員(女性)や契約社員(男性)に就いている方が、正規職に移行しやすいことが示され、Temp to Permが一定程度見られた。しかし若いうちでないと、正規職の仕事に移りにくいことも示され、年々非正規雇用に陥る確率が上がっていることも示された。さらに正社員の仕事に転職できたとしても、パート・アルバイトを長く続けているほど、転職時の賃金が低下してしまう。
 
家政学会家族関係学セミナー
日時 2009年10月4日
場所 金城学院大学(愛知県名古屋市)
概要
「子育て期の父親におけるワーク・ファミリー・バランス」
佐々木 卓代 家族班 リサーチアシスタント
お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科 博士後期課程
本研究の目的は、男性のワーク・ファミリー・バランスを促進するため、男性の仕事と家庭への意識に対する妻の育児・家事頻度などの影響を明らかにすることである。妻の家事頻度が高いほど夫の稼得役割観は高いが夫の家事頻度は低い。妻の育児・家事頻度が高いほど夫婦関係良好度は高く、夫の育児頻度は親子関係が良好で労働通勤時間が短いほど高い。男性のWFBは職場環境要因だけでなく家族関係も重要要因であることが示唆された。
「育児期の母親におけるワーク・ファミリー・バランス」
中川 まり 家族班 リサーチアシスタント
お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科 博士後期課程
二次データ分析結果について自由報告を行った。内容は、末子12歳以下の子どもをもち、就業している子育て期の母親が労働時間などの職場要因、家庭における夫の育児・家事参加という家庭要因から仕事と家庭の負担感をいかに認識し、ワーク・ライフ・バランスを感じているかという点を明らかにする、というものである。
「夫の『妻が働くこと』に対する意識とワーク・ライフ・バランス」
林 葉子 家族班・労働班 リサーチフェロー
お茶の水女子大学ジェンダー研究センター 特任リサーチフェロー
グループ・インタビュー調査における対象者のうち、子育て期の夫に焦点をあて、彼らの家庭生活で家事や育児を遂行していくようになる要因を、夫の‘妻が働くことに対する意識’との関係から、そのメカニズムを明らかにすることを目的とした。分析は、家族システム論を応用し、「妻が働くこと」に対する意識を3つに類型化し、その特徴を明らかにした。
「妻の就業意識とワーク・ライフ・バランス-子どものいない有職女性のグループ・インタビュー」
山谷 真名 家族班・労働班 アソシエイトフェロー
お茶の水女子大学ジェンダー研究センター 特任リサーチフェロー
結婚していて子どものいない有職女性のワーク(就業継続)とライフ(家事・育児)について、家族ライフスタイル論的アプローチを利用し、分析した。ワーク・ライフ・バランスの課題として、(1)育児をしながら働きやすい雰囲気が職場にないこと(2)女性ロールモデルの不在(3)夫の家事参加の少なさと育児参加の期待のなさを抽出した。また、夫婦として、社会規範、社会構造、社会状況などによる問題を乗り越えるための合意形成がなされていないことが明らかとなった。
「働く母親と専業主婦の分岐点」
佐野 潤子 労働班 リサーチアシスタント
お茶の水女子大学 教務補佐
働く母親と専業主婦の分岐点に働く要因はなにかを「女性の仕事と家庭に関するフォーカスグループインタビュー」から考察した。その結果1)育児に対する考え、特に子どもを長時間預けることへの抵抗、2)学童期の教育に対する不安、3)職場の上司・同僚の理解と協力、これらがあるかないかが第一子出産時の就労継続の促進・阻害要因になっていた。
 
 
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