
アメリカのデータ(National Longitudinal Study of Youth 79 :1979年に14から21歳だった男女12682人を追跡している調査および NLSY79 Children and Young Adults:NLSY79の対象となっている女性の子どもに関する情報を1986年から追跡的に収集している調査)を用いて、出産後6、12、24週間で復職する場合に子どもの発育に与える影響を検証した。サンプルは、1988年から1994年までに生まれた子ども1098 名である。
企業との相性と勤続年数の相関を考慮にいれなければならないため、差分の賃金関数を推定した。
お茶の水女子大学文部科学省委託事業「ジェンダー・格差センシティブな働き方と生活の調和」研究プロジェクト(2008~2012)で、2011年2~3月および5月に実施した日本国内に居住する26~38歳の女性を対象にしたアンケート調査(住民基本台帳から層化二段抽出法を用いてサンプリングした)の結果を用いて、女性の就業継続要因および結婚・出産タイミングの影響要因を検証した。
2004年11月から1年間、第3子の誕生の際に育児休業を取得した。そのきっかけは、第3子の妊娠がわかったときに、妻の「私ちょっと産めないなあ」という一言だった。思えば、夫婦が初めての子ども(双子)を授かった際には当然のように妻が育児休業を取得した。しかし、3番目の子どものときには、自分と同じようにキャリアを築いてきた妻の存在もあって「今度は自分が育児休業を取得する番かな」と。
「育児休業」というと文字通り「休んでいる」との印象を持たれがちだが、実際は全く違う。男女ともに仕事も子育ても楽しめる社会の実現には、当然個人の意識改革が必要であるし、また企業側も男性の長時間労働を助長させる会社への忠誠心をはかるような評価制度を改めていく必要がある。また、企業に平均残業時間数、育児休業・介護休業の取得率及び取得期間等の情報を公開させるような社会的仕組みも重要だろう。
「WLB」なるものを政策分析の対象とする際、いくつかの困難が伴う。まず、「ワーク・ライフ・バランス」というタームを使って、個人レベルのコンフリクトやスピルオーバーを語っているのか、企業レベル、あるいは国の政策として語っているのかを明瞭に区別しないまま、3つのレベルが混在した議論がなされることである。しかも、このタームにユニバーサルな定義があるわけではないために、政策領域として何をカバーしているのか変幻自在だ。「よきもの」という価値をあらかじめ得ているため、「WLB」をどのように浸透させるか、どのように実践するかという方策は語られるが、その政策をけん引する論理や歴史的な背景はあまり検討されてこなかったように思う。
第1報告では、カリフォルニア州が定める『有給家族休暇制度(PFL)』に焦点をあて、その制度をめぐり法学者、弁護士、労働組合支援者のそれぞれの立場での家族的責任に関する取組みについて報告された。まず法学者たちは、職場における差別“work life discrimination”の解決を広く取り扱っているが、その解決方法の一つとして集団訴訟がある。訴訟を通して、家族的責任による差別をなくす反差別理論の研究をしている。それに対してLegal Aid Society で働く弁護士たちは、労働者にとっては訴訟のような負担の大きなものよりも、職場環境改善策のほうが効果的であると考えそのモデルを構築していた。たとえば、家族を持つ労働者が家族的責任にある場合には、家族を持つ労働者の働く環境に、職場が合わせなければならないというモデルである。最後に労働組合の役割についてであるが、アメリカのように政府が労働者を守る法律が少ないところはでは、労働者の権利を守るために労働組合の活動が非常に重要になっている。彼らもまた、様々な問題を「労働者の視点」から再構築しようとする試みをしていた。
第2報告では、カルフォルニア州リバーサイド市において子どもを持つ働く女性に対するフォーカスグループインタビューの結果が報告された。日本の働く女性と比較すると、仕事面において、多様な職業履歴(転職経験が多い)があげられるが、このことはアメリカでは転職によって職業のランクを上げていくので珍しいことではない。子どもとの関係については、日々の過ごし方、接し方、周りからの援助の有無や状況などについて細かく聞き取りをした中で、自分の生活のバランスを持つために、忙しい中でも自分だけの時間“Me time”を作り出す工夫をしているエピソードが紹介された。
ボストンにおける幼い子どもを持った高学歴女性6人のワーク・ライフ・バランスの聞き取り調査について報告された。彼女たちは転職や解雇などを経験しているが、女性であることが職探しにおいて不利になることはないということであった。連邦制度の出産後の休業は12週のみであり、ボストンにおいて保育費用は非常に高いなど、仕事と育児の両立支援策は日本と比べて整っていないが、出産後に仕事を継続、または復帰する女性は日本より多い。報告の中での参考資料としてあげた『少子化社会に関する国際意識調査』(内閣府2005)によると、日本とアメリカの末子年齢による就業状況をみると、日本では子どもが0~2歳のとき無業である割合はアメリカの2倍になる。その理由としては、夫や親族の家事・育児の分担割合が高く、また、女性のリスク管理意識が高いことが考えられる。夫の家事・育児分担については、インタビュー者の夫は必ず協力をしており、またすべての夫が育児休暇を取得していた。日本では、当プロジェクトが今年1~2月に実施した調査によると、妻が正社員であっても、家事・育児の80%以上を妻が行っている家庭が5割を超えている。
企業4社を訪問し、そこで働く子どもを持つ女性18人を対象にワーク・ライフ・バランスを聞き取った。米国では、職株ごとの賃金相場が参照されて賃金水準が決まる。同じ職に長く勤務しただけでは賃金は上がらない。このため中小企業に勤務している者は、転職を通じて上位職への移動によるキャリアアップを目指し、大企業では社内公募を通じてキャリアアップをしていた。学歴も重要で、働きながら大学に通ったという発言も少なからず聞かれた。日本では長期雇用を前提として、長期勤続のもとでの昇進が多いが、アメリカは転職や社内公募による昇進が一般的であった。また失業や解雇経験も少なくなく、労働市場の流動性が直に感じられた。
アメリカにおけるワーク・ライフ・バランスが登場した背景は、1960年代にさかのぼる。サービス経済が発展していく中、女性の社会進出の拡大路線が始まった頃で、既婚女性の労働参加が増えた。1960年代から80年代にかけての女性の高学歴化は、女性の就業率を高める要因となってきた。その結果、90年代になると共働きと片働きの所得格差が広がったのである(まさに今の日本の現状と似ている)。アメリカの男性実質年収額が減少傾向にある状況において、共働きでないと生活が困難となり、ワーク・ライフ・バランスに対する意識が高まるきっかけとなった。90年代に入り、グローバル経済化の競争激化の流れは、共働き世帯、労働時間ともに増加させ、IT導入により所得の両極化が進み、アメリカ社会に大きな変化をもたらした。このことは、企業側の意識改革をもたらせた。
質疑応答のあと大沢氏から、日本の正社員の多様な働き方を生み出すには制度だけでなく「何のために必要か」を考える意識改革が必要という話から、参加者との間で日本のワーク・ライフ・バランスのおよび女性の働き方についてディスカッションを行った。
りがいがある、④夫の協力見通しが高く、職場環境もそれを可能にすることである。質的調査では、大企業総合職では、全国転勤ありなしを入社時点で契約するコース別人事が定着し、労働時間も長いが、出産後の継続が厳しいと出産を考える年齢になると苦渋する。また就業継続不安の一方、専業主婦になることへの不安から、出産を躊躇している正社員も見出された。
アメリカはワーク・ライフ・バランス発祥国。しかし政策としては、ワーク・ライフ・バランス憲章をはじめとする明確な政策が打ち出されている日本と比べ、1993年に制定されたFamily and Medical Leave Act(FMLA、無給の育児休暇、看護・介護休暇)の取得を使用者に義務付ける法律があるにとどまる。
さらに差別禁止法による規制は強力であり、男女役割分業など男女の性に関する伝統的固定観念を排斥、妊娠・出産差別についても、不利益な取扱いを差別とすることで、男女平等の実現を志向し、それがWLB推進の一助となっている。