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2016年11月22日更新
修了年度 | 2015 年度 |
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修士論文題目 | 中国語を母語とする日本語学習者の持つ多義動詞「みる」の意味構造 ―日本語母語話者との比較― |
要旨 (1000字以内) |
学習者にとって多義語の習得が非常に難しいとされている(今井, 1993; 森山, 2012)。その理由としては、多義語には複数の意味用法があり、学習者にとって負担が大きい。また、認知意味論の観点から、多義語の様々な意味は中心に位置するプロトタイプ義から何らかの動機づけにより拡張したものであり、全体を1つのカテゴリー構造としたものである。しかし、母語話者のように各意味を1つのカテゴリー構造として捉え、動機づけを自然に理解することは学習者にとって非常に困難であると考えられている。 そこで、本研究は認知意味論の観点から日本語の多義動詞「みる」に焦点を当て、中国語を母語とする日本語学習者(以下,CJL)はどのような意味構造を持つか、日本語母語話者(以下,JNS)が持つ「みる」の意味構造との相違点を明らかにすることを目的とした。そのため、本研究では、CJL(中上級)38名を対象者として、以下のように研究課題を設定し、実験の結果に基づき統計分析を行った。 研究課題2では、CJLが持つ意味構造とJNSのそれとの相違点を明らかにするため、先行研究の大西(2015)におけるJNSのデータを多次元尺度解析、クラスター分析に再度統計を行い、課題1の結果と比較した。その結果、JNSとCJLはどの語義をどの程度プロトタイプと判断しているかには差があるが、最もプロトタイプ的な意味は両者で共通していることが明らかとなった。また、CJLが持つ「みる」の意味構造はカテゴリー形成が発達途上であり、JNSのようにカテゴリーとして明確にまとまっていない。そして、JNSはプロトタイプを中心にまとまったカテゴリー構造を持つのに対し、CJLはJNSのようなカテゴリー構造を持たないという特徴が見られた。さらに、CJLは意味拡張の動機づけや下位カテゴリーに気づかないという傾向も明らかとなった。 |