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「究極のエネルギー源 核融合発電の現状と将来への期待」セミナー開催

2024年9月20日更新

2020年、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言しました。現在、先進諸国ではCO2排出ゼロを目指してさまざまに努力を重ねていますが、現実の世界では、依然としてCO2排出量が増え続け、温暖化対策はなかなか実現に至っていません。

脱炭素化に向けてさまざまなエネルギー関連技術等のイノベーションへの取り組みが行われていますが、その一つが核融合発電です。各国がその開発を競っている中、開発の鍵を握るのがトカマク型核融合実験炉ITERの開発です。セミナーでは、現在、人類史上最大級のプロジェクトとして日本、EU、米国、ロシア、韓国、中国、インドの7極により進められているこの開発について、技術的な課題や現在の開発状況などを紹介し、未来のエネルギー問題について考察していきます。

講師を務める三木 一克氏は株式会社日立製作所 電力・電機開発研究所長を務めた経験があり、この核融合発電に関して深い知見をお持ちでいらっしゃいます。将来、エネルギー問題はどうなっていくのか、脱炭素社会を私たちは実現することができるのか。興味のある方はぜひご参加ください。

セミナー概要

日時 10月30日(水曜) 17時~18時30分
場所 お茶の水女子大学 国際交流プラザ3階 セミナー室
対象 本学学部生・大学院生・教職員等、本学関係者
講師 (元)株式会社日立製作所 電力・電機開発研究所長/機械研究所長、(元)株式会社日立メディコ 代表執行役社長 三木 一克
内容

講演内容の概要:

(1) トカマク型核融合実験炉ITERの開発が、人類史上最大級のプロジェクトとして日本、EU、米国、ロシア、韓国、中国、インドの7極により進められている。2001年7月に設計完了し、2007年にフランスで建設が開始された。しかし、運転開始は当初の2020年から2033年以降に遅延し、本格運転は2035年以降の予定である。建設費用は当初見積もりの約10倍、500億ドル(約5兆円)に拡大している。

(2) ITERには主に下記の技術的課題がある。
1. 国際共同プロジェクトの弱点、2. 巨大で複雑な炉構造、3. コイル重量によるコスト高、4. 高速中性子による炉壁の損傷・放射化、5. 大量の高ベータ・ガンマ廃棄物、6. トリチウム処理、7. 戦略物質 Be、Liの利用、8. 建屋の中性子遮蔽対策

(3) 21世紀になり世界で30社以上のスタートアップが設立され、民間からの資金調達額は48億ドル(約6500億円)以上にのぼる。
産業界で実用化された新技術(高温超電導体、AIなど)の利用や新たな磁場閉じ込め方式の開発が進み、核融合実現に向けた大きな進展が具体的に見え始めてきた。ITERの遅れにより、核融合実用化で先行する可能性が出てきた。

(4) 日本では、核融合発電の実用化に向けた産官学の連携組織が2024年3月に発足した。国の原型炉計画は2035年建設開始、2045年発電実証としているが、欧米の核融合実用化に遅延する可能性が大きい。2030年代実用化を前提にした開発戦略が必要である。

(5) 2050年カーボンニュートラル社会の実現に向けて、自動車産業では、CASEの出現で産業構造と社会システムが大きく変化しようとしている。エネルギー産業においても、新しい概念の核融合発電が社会に大きな変革を及ぼすのではないかと予想される。

申込方法 メール件名:「究極のエネルギー源セミナー」
①氏名(ふりがな)②所属・学年③E-mailアドレスを明記し、leading-center@cc.ocha.ac.jp までメールでお申込みください。

問い合わせ先

リーディング大学院推進センター
〒112-8610 東京都文京区大塚2-1-1
E-mail: leading-center@cc.ocha.ac.jp

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