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劉 瑞利

2016年11月22日更新

中国語を母語とする上級日本語学習者の「名詞+動詞」コロケーションの使用
―YNU書き言葉コーパスの分析を通して―

劉 瑞利
修了年度 2015年度
修士論文題目 中国語を母語とする上級日本語学習者の「名詞+動詞」コロケーションの使用
―YNU書き言葉コーパスの分析を通して―
要旨
(1000字以内)

第二言語(以下L2)の語彙習得研究において、学習者コーパスを用いたコロケーションの習得研究が増えつつある。コロケーションの習得は母語話者らしい流暢さや自然さに強く関わっており、上級学習者にとっても難しいと指摘されている。

本研究は中国語を母語とする上級日本語学習者(上級CJL)の「名詞+動詞」型コロケーションの使用に焦点を当て、「YNU書き言葉コーパス」の分析を通して、上級CJLの使用実態と誤用の傾向、及び日本語母語話者(JNS)との使用上の違いを明らかにしようとしたものである。また、中国語の影響を受けていると推測された誤用に関しては、同コーパスにある韓国語を母語とする日本語学習者(KJL)に同じような産出がないかも合わせて検証した。

コロケーションの定義・範囲は多くの先行研究と同様に、「電話をかける」のような制限結合のみをコロケーションとした。学習者が使用したコロケーションの許容度判定は①辞書、②コーパス、③母語話者の三段階によって行った。

その結果、上級CJLがJNSと比べ、「名詞+動詞」コロケーションを有意に多く使用する傾向にあり、先行研究と逆の結果が得られた。コロケーションの使用数は学習者のL2習熟度以外に、コロケーションの具体的な抽出方法、学習者の母語の特徴などにも影響される可能性があり得る。具体的な共起語において、過剰使用語と過少使用語の両方が観察された。特に中国語と語彙的一致度の高いコロケーションの使用頻度が高く、中国語と意味的に対応している動詞の過剰使用が見られた。コロケーションの誤用のうち、母語である中国語の影響を受けていると推測されたものは1/3程度であり、L2日本語のコロケーション習得においても、学習者の母語が誤用の要因の一つであり、上級になっても、その影響が大きいことが示された。更に、母語の影響を検証するために、CJLが母語の影響を受けていると判断された誤用をKJLの産出と照らし合わせた。その結果、それらの誤用は母語の影響によるものか、日本語言語内の問題であるかは確実に判断できなかったが、「だしを作る」のように、CJLとKJLのコロケーションの両方に見られ、CJLは母語の影響を受けていると判断されており、KJLは母語の影響を受けていないと判断されたものも見られた。母語の影響を判断する際には、母語話者に判断してもらうだけではなく、他言語を母語とする学習者と比較することも不可欠であると示唆された。(992Words)

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