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2016年11月17日更新
修了年度 | 2015 年度 |
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修士論文題目 | 中国語を母語とする上級日本語学習者のフィラーの使用について ―場面によるフィラーの異なりに着目して― |
要旨 (1000字以内) |
わたしたちの多くは、円滑なコミュニケーションを望み、無用なトラブルは回避したいと考えている。談話分析において、「断り」や「苦情」といった言語行動の研究が盛んであることと無関係ではないだろう。それらの研究で、「言いよどみ」や「ためらい」として扱われてきたものの一つに「フィラー」がある。日本語のフィラー「あの」「ええと」などは会話で頻繁に使われる。「あのー、すみませんが」と話し手が発話冒頭で使えば発話権をとることができる。「つまり、ええと、それはなんかこう、うまく言えないけれど」と発話途中で使用すれば、発話権を保持することができる。フィラーとは、話し手ストラテジーの一つである。 日本語教育においては、宇佐美(2012)が、日本語の教科書はフィラーを取り扱っているものの、それが円滑なコミュニケーションのためのポライトネスに関わっているという観点にまで踏み込んで説明しているものはほとんどなく、「やわらげ機能」のあるフィラーの使い方とその機能などの研究を進め、体系的に指導する必要性がある、と指摘している。 10場面中でフィラーの出現割合が最も高いのは、「仕事を辞める許可求め」の場面(8.85%)で、最も低いのは「友人の依頼を断る」場面(4.72%)であった。出現割合が高い場面で、CAはロールカード指示文以外の理由を加えて発話していた。目上の人間(上司)を説得しなければならないとき、また簡潔に用件を述べるだけでは失礼にあたると判断したとき、CAは「あの」や「なんか」で発話を組み立て、長く話すのだと考えられる。それは相手の「面子」に対する配慮であると考えられる。山根(2002)は、フィラーは聞き手に配慮したり、改まり度の高い談話で多くなったりといった心理的側面が関わってくる、と指摘している。本研究の結果からも、上下関係のある改まり度の高い場面とフィラーの出現には相関関係があったと言える。 |