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大矢 恵美

2016年11月22日更新

台湾の高校生における日本語学習継続意識と日本語学習動機、キャリア意識との関連
−高級職業学校日本語科女子学習者を中心に−

大矢恵美
修了年度 2015年度
修士論文題目 台湾の高校生における日本語学習継続意識と日本語学習動機、キャリア意識との関連
−高級職業学校日本語科女子学習者を中心に−
要旨
(1000字以内)
台湾の日本語学習者数は世界第5位と多く、台湾人の100名に1人が日本語を学習している。台湾の日本語教育における問題点について交流協会が2009年に学校教育機関及び学校教育以外の日本語教育機関へ調査した結果、「学習者の減少」を多くの教育機関が問題であると捉え、日本語学習の継続に問題があることが示唆された。従来の研究では、対象者が大学生日本語学習者に限られ、中等教育段階の日本語学習者を対象としてこなかったうえ、日本語学習の継続に関して、キャリア意識の観点からの研究もされてこなかったことが明らかとなった。
そこで、本研究では台湾における高級職業学校日本語科女子学習者163名を対象に、日本語継続意識と日本語学習動機、キャリア意識との関連を明らかにするため、3つの研究課題を設定し、質問紙を用いた調査を行った。
研究課題1では日本語学習動機を明らかにするために因子分析を行った結果、〈日本文化への興味・関心〉〈外的評価重視志向〉〈日本と関連した将来ビジョン〉〈やむを得ない外的状況〉〈日本と関わりのある身近な人物の影響〉〈台湾における日本語同調志向〉の6因子が抽出された。さらに、学年による差異を検討した結果、日本語学習動機では〈日本文化への興味・関心〉〈日本と関連した将来ビジョン〉〈やむを得ない外的状況〉の3因子で3年生より2年生の方が有意に高い値を示していることが明らかとなった。
研究課題2では、キャリア意識を明らかにするために因子分析を行った結果、〈経済的安定志向〉〈社会的責任重視志向〉〈自己挑戦志向〉の3因子が抽出された。キャリア意識では、学年による差異は確認されなかった。
研究課題3では、日本語学習継続意識と日本語学習動機、キャリア意識、働く際に使いたい言語との関連を検討するため、日本語学習継続意識を基準変数、日本語学習動機、キャリア意識、働く際に使いたい言語を説明変数とした重回帰分析を行った。その結果、日本語学習継続意識と日本語学習動機〈日本文化への興味・関心〉〈日本と関連する将来ビジョン〉〈日本と関わりのある身近な人物の影響〉、キャリア意識〈自己挑戦志向〉、働く際に使いたい言語〈母語〉〈日本語〉との正の影響が確認された。以上のことから、日本語学習動機〈日本文化への興味・関心〉は専攻などの形式に関わらず、日本語学習の継続を支える普遍的な要因であること、キャリア意識〈自己挑戦志向〉は非専攻での日本語学習継続意識を支えていたこと、継続形式により求めている日本語の到達点が異なることが示唆された。
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