お茶の水女子大学
日本言語文化学研究会
 

  【第3回 講演会】(終了)

     
 

中国における日本語教科書編集

―最新の課題報告を兼ねて−


講演者: 曹 大峰(北京日本学研究センター)
 

日時: 2007年5月18日(金)16時40分〜18時30分 
場所: お茶の水女子大学 理学部3号館 207教室
参加費: 会員無料、非会員500円 (当日入会可)



海外の日本語教育では、教科書の役割が大きい。
中国でも明(1368Y)の時代から日本語教育が始まり、教材の編集が時代とともに発展してきたが、今世紀70年代以来、中日国交正常化により日本語の学習が特に盛んになり、教材編集は主に素材補強→素材改善→素材統合の方向で進んできた。現在、さらに教材研究を通して、言語学・外国語教育学・教育工学など広く学際的な成果を盛り込んだ新しい日本語教材の開発が進んでいる。
その一例として、26年もの歴史を持つ日中共同事業である北京日本学研究センターでは、最近日本語教育学を主専攻とする修士課程が設立され、日本語教育学の専門人材の養成と日本語教材に関する共同研究が進められている。これまでは中日両国の学者の協力により「中国の日本語教育における主幹科目「総合日本語(精読)」に関する総合研究」が完成し教科書コーパスと論文集などの成果物が世に出された。また、「中国の日本語教育のための新しい教材像に関する研究」に続き、教育部「十一五企画」教材出版計画で採用された新教材作成のための総合シラバスの研究を「話題先行・科目配合・教師支援・手段進化」の目標で実施中である。
本報告では上記の研究を踏まえて日本語教材作成の課題と最新の進捗状況を報告し、専門家をはじめ聴講者の皆様にご意見をいただき、共通の関心点や課題を交流したい。
 


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     【報告】

     
 

 中国における日本語教科書編集 ―歩み・現状・課題報告―

北京語言大学 楊 峻

 ワクワクさせる曹先生のご講演を聴いて、とても元気付けられました!
 先生はご自身が経験したことを話しながら、教科書編集の歴史変遷を紹介してくださいました。
70年代から80年代までは、中国で日本語のリソースが非常に貧弱していて、教師個人による素材補強の傾向が強かったが、90年代以降は、教科書ガイドラインで、知識学習から応用能力の養成への転換が強調されているが、実際に教科書を開いてみると、文法が正しいが、実生活に使われていない日本語がたくさん載っているという。2000年以来の教科書編集では、道具としての日本語の素材が追求されていると同時に、社会の変革に応じて、どのように人材を育成するかも課題の一つとなったと話されて、中国の日本語教育のための新しい教材像に関する研究を紹介してくださいました。新教材の中で、真正性と実用性が重視した日本語を素材として取り入れること、四技能を統合させること、媒体を多様化させること、教師へのサポートを作ることなどなど…心を躍らせる話がいっぱいありました。そして、このような充実した教材を通して、学生にコミュニケーション能力と社会文化能力を身につけてほしいとおっしゃいました。
 私は中国で
3年くらい日本語を教えていました。いつも教材のことで頭を抱えていました。私が使った日本語教科書の中には、必要以上文法に対する説明が詳しかった。動詞の活用を習う課で、「終止形」、「未然形」など学校文法の言葉が出てきて、学生も困惑するし、教師の私も説明に苦労していた。私の仕事は言語学者を育つのではなく、日本語を話せる人を育つのだと思いながら、どんな題材でどのように教えればいいかは戸惑うまま、文法学習を中心とする教科書を使っていました。
 曹先生の示された新教材の具体例を見ると、ワクワクしました。「このような教科書があれば、やっていける!やってみたい」と思いました。文法学習を中心とする授業に教師も学生も限界を感じていながら、どのように改善をすればいいかは分からない中国の日本語教育の現場で、新教材の作成は具体案の提供において、非常に意義のあることだと思います。
 ぜひぜひ応援したいと思っています!
 

 
     

  

   【会場の様子】

 

 

 

 

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