8月22日(火)、第二回お茶の水女子大学日本言語文化学研究会主催のワークショップが行われました。このワークショップは昨年から取り入れられた新しい試みで、昨年の「対話的問題提起学習を通してピア・ラーニングを考える」にひき続いて、今年は「協働学習のための活動デザイン−技能別学習の実践(聞く・話す)−」というテーマで行われました。今年、主眼を置いたコンセプトは、協働学習の概念が具体的な教室活動としてどのようにデザインできるかという点です。参加者は20名で、朝10時から予定終了時間の4時を過ぎてまで、学生、日本語教師という参加者それぞれの立場で、熱い議論が繰り広げられました。
当日のワークショップの流れは以下の通りです。
1.グループワーク(アイス・プレーキングと事前課題の紹介)
2.「協働学習とは?」(金 孝卿さん)
3.体験(一分間スピーチと内省活動)
4.現場に合ったタスクづくり
最初のグループワークでは、参加にあたり、参加者が作成してきた事前課題(協働学習を促すための「話す・聞く」活動の作成)を紹介し合うところから始まり、それぞれの現場での問題や疑問点なども話し合われました。次に、「協働学習とは何か」について、金考卿さんから概念説明があり、それを具体的な形で体験するために、「一分間スピーチ」と、その活動に対するセルフ内省、ピア内省を実際に行いました。ワークショップ後のアンケートでも、「内省という考え方がおもしろかった」という感想があり、協働学習の考え方に基づくグループ学習が単なるグループ活動とどこが違うかについて、それぞれの参加者への問題提起になったと思います。
その活動の後、協働学習を促すためのタスクづくりを行いました。今回のワークショップでは、最後のタスクづくりに主眼を置いていたので、話し合いには十分時間をとりました。協働でタスクづくりをすることによって、グループ内ではどのようなインタラクションが生じるか、また、事前課題がどのように吟味され、改善されていくかに注目しました。全部で、6つの話す・聞くタスクが作成され、それぞれのグループの方にタスクの概要と、@なぜ協働学習の考え方に基づくタスクと言えるか?Aこのタスクが話す・聞く学習にどのように役に立つか?について発表をお願いし、グループ間や全体での意見交換が行われました。
今回のワークショップでは、参加者がこれらのタスクをそれぞれの現場でどう取り入れるか、協働学習の考え方をどう生かしていくかについて、議論の場を提供することができたのではないかと思います。WS後、協働学習の考え方などに関する参考書のお尋ねがありましたので、昨年、今年の参考図書を巻末に記載いたします。今後とも言語文化学研究会の活動の一環として、ワークショップ継続に向って努力していきたいと思いますので、ご意見、ご要望などお寄せください。皆様からのご意見・ご要望を心よりお待ちしております。 (ワークショップ担当者)
参考図書
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池田玲子、舘岡洋子(2006)『日本語教師のためのピア・ラーニング入門』ひつじ書房
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佐藤公治(1999)『対話の中の学びと成長』金子書房
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ジョンソン,D.W・ジョンソン,R.T・ホルベック,E.J著 杉江修治他訳(2004)『学習の輪−アメリカの協同学習入門』二瓶社
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舘岡洋子(2005)
『ひとりで読むことからピア・リーディングへ−日本語学習者の読解過程と対話的協働学習』東海大学出版会
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中野民夫(2000)『ワークショップ』岩波書店
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中野民夫(2003)『ファシリテーション革命』岩波アクティブ新書69 岩波書店
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野沢聡子(2004)『問題解決の交渉学』PHP新書
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フレイレ,P.著 小沢有作・楠原彰・柿沼秀雄・伊藤周共訳(1979)『被抑圧者の教育学』亜紀書房
- フレイレ,P.著 里美実る・楠原彰・桧垣良子共訳(1982)『伝達か対話か』亜紀書房