第3分科会では、以下の三つの発表が行われました。
まず、平野美恵子氏により「多文化共生指向の日本語教育実習におけるティーチャー・コミュニティー構築の過程」という題目の発表がありました。多文化共生指向の日本語教育実習における話し合いを縦断的に分析し、Teacher
Communityの構築過程を明らかにしようとするもので、話し合いの展開が、3つのパターンに分類されること、その展開パターンは、時間経過に伴い変化するという結果が報告されました。こうした結果から、実習生が、相互作用の蓄積を通し、協働的な意思決定を行い、Teacher
Communityを構築していく可能性が示唆されました。質疑応答では、展開パターンの変化のきっかけとなるものは何かなどの質問があり、展開の詳細について議論されました。
次に、木村美希氏から「日本語非母語話者と母語話者を触媒する実習生のストラテジー」という題目の発表がありました。木村氏は、実習生と日本語クラスの参加者間の会話から、実習生の触媒者としてのストラテジーを分析し、そのストラテジーが参加者のコミュニケーションに与える影響を明らかにしました。質疑応答では、教師の触媒者としての役割を会話の中から見出すことの意義、また、教師ではなく、母語話者の参加者が触媒者の役割をする可能性などについて議論が行われました。
最後の張瑜珊氏の発表「台湾の日本の女子大生同士における初対面会話の対照研究」では、台湾と日本の女子大生同士の初対面会話を、話題選択の観点から比較した結果が報告されました。両者の話題選択の差異を見るために、話題をタイプ別に分類し、初対面会話に現れるタイプを分析した結果、会話全体から見ると、台日間に出現する話題のタイプに差異は見られませんでした。でも、時間を細かく分けて分析すると、日本人の会話では、時間の経過とともに話題に変化があり、台湾人には、ほとんど変化がみられないという結果が示されました。質疑応答では、話題タイプの分類方法や、台日間の「親近感」の認識の相違を明らかにする必要性などについて議論されました。
どの発表においても、質疑応答の時間に多くの質問や意見が出され、時間が足りないという状態でした。活発に議論が展開され、様々な視点から発表の内容について考えられたことで、それぞれの発表の意義がさらに深まったと思います。
東京農工大学 田崎敦子