お茶の水女子大学
日本言語文化学研究会
 

  【第30回 日本言語文化学研究会】

  【終了報告】

  ポスター発表  
 

    

    

 
     

  

  分科会  
 

  

 
     

 

   【各分科会の様子】

◆言文・第1分科会の様子(タイムキーパー・伊東あゆみ)

 第1分科会では、研究領域の異なる3つの発表が行われました。以下に簡単にまとめてみます。
 
 1番目は、穆紅さんから「二言語環境に育つ中国語を母語とする小・中学生の中国語と日本語の関係 −会話力の場合−」という題目で、近年の日本の学校現場で課題となっている外国人児童・生徒の言語能力についての研究報告が行われました。会話力を3つの側面から測定し(OBCテスト利用)、Cummins1986)の「二言語相互依存仮説」を支持する結果が報告されました。子どもたちの認知基盤である母語と日本語の二言語能力を多面的に捉えていく研究があまり行われてこなかった現状のもと、教育現場で対応されてきた先生方や、また殆どが親の事情で二言語環境を余儀なくされている子どもたちに非常に重要度の高い研究であることが、発表者と聴衆者がともに確認できた内容でした。
 2番目は、倉田芳弥さんから「チャットにおける聞き手の行動 −日本語母語場面と接触場面の相づちの比較から−」という題目で、チャットという媒体での言語行動を明らかにする一つの方法として「聞き手の相づち」に着目した研究報告がされました。チャットという媒体を対象にした研究から人のコミュニケーションのあり方を明らかにしていく研究であり(まだ調査が十分でない領域)、日本語母語話者同士、母語話者と非母語話者のやり取りを比較することで言語(文化)を異にする者同士のコミュニケーション行動の違いの一端を明らかにしていく研究でもありました。発表後の休憩時間も聴衆者から質問にあう姿も見られました。
 3番目は、本橋美樹さんから「英語話者による促音の認識」という題目で、米国の大学の日本語学習者を対象として特殊拍の知覚の指導効果の実証研究が発表されました。学習者が促音を母語話者と同じように知覚するのは難しく(長音として認識)、さらに発音指導の難しさから、2つ目の実験では音響分析ソフトを利用して音声情報を視覚化する(Electronic Visual Feedback)ことで、促音の聴き取りに効果があったことが報告されました。通常の発音指導(主に訂正フィードバック)だけでは知覚の変化は難しく、視覚的情報を活用するという新しい指導法の可能性が見えてきた研究でした。質疑応答を通して、本橋さん自身が聴衆者から新たな視点をもらうなど、インタラクティブな研究発表となりました。


 コメンテーターからのコメントや質問、そして質疑応答の時間が15分もあるということで、25分という短い発表時間では聞けなかった発表者の問題意識を知るこができ、有意義な時間を持つことができました。

お茶の水女子大学国際日本学専攻 伊東あゆみ

 

 

◆言文・第2分科会の様子(タイムキーパー・高橋薫)

2分科会(302教室)では次の三つの研究発表が行われました。 

一つ目の発表は、京都教育大学の浜田麻里氏による「中国大学日本語教員と学生の言語学習・教育観」で、教授法・学習動機・教室外学習などに関わる質問紙調査の結果が報告されました。それによると、教科書を利用した学習に関しては学生と教師の認識はほぼ一致しているものの、教科書外の活動については、教師は「討論」を重要視しているのに対し、学習者は「ロールプレイ」を求めているなど、両者の間に認識の差があることが明らかになりました。

二つ目の発表は、テスト法に関する実証研究で、お茶の水女子大学の小林久美子氏が「読解テスト解答方式が受験者のテスト得点に与える影響−中国語母語話者の場合」を報告されました。読解テストには多肢選択式テストと自由回答式テストがあり、これらのテストを構成する問いにはグローバルな問いとローカルな問いがあることから、読解テストの得点が、テスト方式・問いの種類・学習者の読解能力によってどのように異なるかが検証されました。その結果、読解能力にかかわらず多肢選択式は自由回答よりも有意に得点が高いこと、ローカルな問いでは回答方式によって差は見られないものの、グローバルな問いでは多肢選択式の得点が有意に高いことが明らかになりました。

三つ目の発表は、東京外国語大学院生菊池富美子氏による文献レビュー「学習リソースとは何か―日本語教育における学習リソース研究の概観」です。菊地氏は日本語教育において学習リソースがどのように定義されてきたかを整理し、また、学習者は学習リソースをどのように捉えているかに関するアンケートやインタビューによる研究を概観した上で、学習リソースの定義を再考し「第二言語習得におけるリソースとは、環境にあって学習または教育に利用されうる、目標言語の情報源である。」という定義を提案しました。

各発表者にはコメンテーターからの専門的な解説や質問等がなされ、また、会場からも多くの質問が寄せられ、活発な討議が行われました。

お茶の水女子大学国際日本学専攻 高橋薫 

 

 

 

◆言文・第3分科会の様子(タイムキーパー・橋本ゆかり)

3分科会では、次の3つの発表が行われました。まず、松浦恵津子先生の「接続詞『それが』の意味用法について−記述的に」、そして内田安伊子先生の「肯否要求質問に対する省略返答−その形式と意味の関係」、最後に、孫愛維さんの「指示詞の学習過程におけるJSLとJFLの相違性−台湾人の日本語学習者を中心に−」でした。発表会場には20名ほどの聴衆が集まり、和やかかつ厳粛な雰囲気の中、研究者の発表、発表後のコメンターからの評価コメント、質疑応答と、円滑に進行しました。

「接続詞『それが』の意味用法について−記述的に」は、「それが」がどのような意味関係で接続しているのかについて詳細に分析した研究です。「それが」の前後の意味関係について、先行研究でとらえていないものも含めた全体的かつ詳細な記述分析がなされています。「肯否要求質問に対する省略返答−その形式と意味の関係」は、省略返答について、形式と意味(成立命題)にどのような関係があるか、そして命題の解釈を決めるのは何かということについて分析が進められています。「指示詞の学習過程におけるJSLとJFLの相違性−台湾人の日本語学習者を中心に−」は、JSLとJFLという環境の違いが指示詞の学習に及ぼす影響について分析されています。そしてその影響が学習者の日本語能力によって異なるのかという、さらに掘り下げた課題にも取り組んだ研究になっています。

どれも独自の観点からの鋭い考察がうかがわれ、大変興味深い発表であったと思われます。コメンテーターの評価コメントからは、研究の特色、意義を適格に理解することができました。また質疑応答では、異なった観点からの分析も示唆され、発表者及び聴衆の双方において大変意義深いものとなったと考えます。

お茶の水女子大学国際日本学専攻 橋本ゆかり

 

 

 

◆言文・第4分科会の様子(タイムキーパー・白以然)
 

 第4分科はの発表は韓国及び韓国語母語話者に関するものでした。全体の進行と時間は予定通り進み、司会とコメンテーターのやり取りもスムーズで、いい討議時間になったと思います。
 

お茶の水女子大学国際日本学専攻 白以然

 

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