
日本において、狭義の性別役割分業意識「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という意見に賛成する20代女性は27.8%、30代女性でも36.1%と低くなっている(「男女共同参画社会に関する世論調査2009年)が、女性が「自分が育児を主にすることは当然だと思う」という育児役割意識については約70%の女性が賛成している。そこで、実際の性別役割の影響をうけていない未婚女性について、性別役割分業意識と育児役割意識それぞれの規定要因を探った。データは、日本は、全国の26~38歳の女性を対象に2011年2~3月に実施した無作為アンケート調査、米国は、6都市の25~39歳の女性を対象に2012年2~3月に実施したインターネット調査である。(詳細はこちら)分析の結果、性別役割分業意識については、日米とも、学歴が高まるほど、また、母が就業継続していた場合、性別役割分業意識に否定的であった。さらに、地域による差があった。日本のみで質問した「学卒時に賃金の面で男女差がないことを重視した」場合も、性別役割分業意識に否定的であった。一方、育児役割意識については、米国では母が就業継続していた場合に比べて、再就職型、退職型では強いが、日本では、「学卒時に賃金の面で男女差がないことを重視した」(学卒時の平等意識)場合のみ弱かった。
本研究では26歳から38歳の日本女性を対象とした無作為アンケートの調査データ917票(2011年)と、米国の六大都市の25歳から39歳の女性を対象に実施したWEB調査1508票(2012年)から女性の就労と教育の関わり、特に稼得役割の学びを日米比較し、考察した。
12歳以下の子どもを持つ父親を対象とした日本(n=715)と米国(n=1500)で実施した調査の結果を用い日米比較をするために、父親の家事・育児参加頻度を従属変数に、父親の属性(年齢・学歴・収入)、父親の就業要因(企業規模、役職、通勤勤務時間)、家族要因(妻の収入、子どもの年齢・数)、生育歴、子どもの頃の家庭役割体験を独立変数、生育歴に対する認識、父親アイデンティティ(子どもの価値、父親役割観)と家庭科有用感を媒介変数として、パス解析の多母集団同時分析した。その結果、生育歴(実の父親の家事・育児参加)と家事・育児参加との関係をみると、日米ともに、実父の育児参加が多いほど、本人も育児参加が多くなる。日本では、実父の育児参加が多いほど子どもの価値観が高くなり、価値観が高くなるほど、本人の育児参加が多くなる。また、実父の育児参加が多いほど、本人の家事参加が多い。一方、米国では、実父の家事頻度が少ないのを望ましくないと思っている者ほど、本人の家事参加は多い。このことから、家事役割や育児役割にはロールモデルが必要であり、特に、家事役割には現在ロールモデルが不在なため、現在の父親が次世代のためにロールモデルとなる必要がある。
本研究は6歳以下の子どもをもつ有配偶の父親を対象に、妻から育児や家事への参加を期待されること、そして父親自身の就労意識によって父親の育児や家事参加が増えるのかという点について日米比較を通じて明らかにすることを目的としている。研究において援用するマターナル・ゲートキーピング(Allen and Hawkins 1995)という概念は、父親である夫に対して妻が育児や家事への参加を促すことや、反対に妻が家事や育児を行ってしまうため、結果として夫の育児・家事参加を抑制させるという妻の役割を指す。対象は、末子6歳以下であり育児項目に回答している父親データ日本の父親457名、米国の父親768名である。
本研究では、日本の父親715名と米国の父親1500名のデータを用いて父親のディストレス(ストレスを上手に処理できず心身が不調に陥ること)が育児参加に与える影響について示した。日米の多母集団同時分析の結果、日本の父親のみ、ディストレスが大きいほど育児参加が少ないという結果が得られた。一方、米国の父親では、ディストレスと育児参加の間に有意な関係は見られなかった。両国で共通するディストレスの規定要因は、収入、職場子育て環境柔軟性、通勤勤務時間、末子年齢であった。日本のみ、職場での育児に関するネットワークが強いほどディストレスが低下するという結果が示された。また、日米共通して子どもの価値が高いほど、育児参加が多いという結果も得られた。ただ、この傾向は日本よりも米国の父親に強く見られるものであった。
本研究では26歳から38歳の日本女性を対象とした無作為アンケートの調査データ917票(2011年)と、米国の六大都市の25歳から39歳の女性を対象に実施したWEB調査1508票(2012年)から女性の就労と教育の関わりを比較し、考察した。