お茶の水女子大学
日本文化研究の国際的情報伝達スキルの育成
海外研修 一覧

海外研修(平成21年度)

米国・ヴァッサー大学教壇実習
日 時 2009年11月16日(月)~21日(土)
場 所 ヴァッサー大学(米国・ニューヨーク州ポキプシー)
参加者 お茶の水女子大学大学院 博士課程5名
日本語教育専攻 日本文学専攻
王亜茹、鄭在喜、吉田好美 川原塚瑞穂、武内佳代
指導教員          【お茶の水女子大学】  菅聡子 森山新
         【ヴァッサー大学】     土屋浩美 松原優子

ヴァッサー大学滞在中の活動表
11月16日
(月曜日)
10:00-11:00 日本語3年生 ヴァッサー側担当:土屋浩美先生
日本語教育専攻の学生(指導・森山新)による教育実習  
11:00-12:00 日本語3年生PPT プレゼンテーション   
見学
14:00-15:00 日本語3年生 ヴァッサー側担当:土屋浩美先生
日本語教育専攻の学生(指導・森山新)による教育実習
15:00-16:00 キャンパスツアー
11月17日
(火曜日) 
08:30-09:30 日本語教育ワークショップ  (講師 森山)
12:00-13:15 日本語4年生 ヴァッサー側担当:松原優子先生
日本語教育ならびに日本文学専攻の学生(指導・森山新、菅聡子)による授業参加
13:10-16:25 Japanese Popular Culture and Literature
ヴァッサー側担当:土屋浩美先生
菅聡子による講義(村上春樹「ノルウェイの森」について)
日本文学専攻の学生(指導・菅聡子)はディスカッサントを担当
11月18日
(水曜日)
10:00-11:00 日本語中級 ヴァッサー側担当:土屋浩美先生
日本語教育専攻の学生(指導・森山新)による教育実習)
14:00-15:00 日本語中級 ヴァッサー側担当:土屋浩美先生
日本語教育専攻の学生(指導・森山新)による教育実習
19:00- テレビ会議システムを使った授業(詳細未定)
11月19日
(木曜日)
10:00-11:00 日本語2年生 ヴァッサー側担当:松原優子先生
日本語教育ならびに日本文学専攻の学生(指導・森山新、菅聡子)による授業参加
15:10-16:25 Japanese Popular Culture and Literature ヴァッサー側担当:土屋
日本文学専攻の学生(指導・菅聡子)による教壇実習
(ケータイ小説と現代少女文化について)
11月20日
(金曜日)
10:00-11:00 日本語3年生 ヴァッサー側担当:土屋浩美先生
日本語教育専攻の学生(担当・森山新)による教育実習
14:00-15:00 日本語3年生 ヴァッサー側担当:土屋浩美先生
日本語教育専攻の学生(担当・森山新)による教育実習)
17:00- 講演:菅聡子
題目:暴力の表象と現代日本文学―村上春樹「海辺のカフカ」とサブカルチャー
交流パーティー
11月21日
(土曜日)
10:00-12:00 学生間交流―日本語・日本文化を学ぶために有効な方法・材料とは?
*日程中、空き時間は、ヴァッサー大学のジェンダーならびに英文学の講義を見学。

海外教壇実習報告(日本語教育学グループ)
[担当]  森山 新
  ◆日 時: 2009年11月15日(日)~22日(日) 
  ◆場 所: ヴァッサー大学(米国・ニューヨーク州)
  ◆参加者: 吉田好美(D1)、王亜茹(D1)、鄭在喜(D1)、森山新(指導)  
          今回は3名の院生が、中級学習者(3年生)を対象に「言語と文化をともに学ぶ」をテーマに教育実習を行った。
16日(月)   10:00-10:50 吉田さんの実習(日本語中級 テーマ:断り)  場所 DF310号室 参加者 3年生
11:00-12:00 PPTによるVassar大紹介作品の発表  場所 DF310号室 参加者 3年生
14:00-14:50 吉田さんの実習(テーマ:断り)  場所 SC011号室 参加者 3年生

<概要> 授業はまず相手の誘いを2つのモデル会話を聞き、それが断っているか、どうして断っていると思うか、2つの断り方にどのような違いがあるか、などについて考えた。その後、ペアで各自断りのスキットを作り、ロールプレイをしてもらった。
15:00-16:00 キャンパスツアー

<概要> サラ・ペリーさん(4年生)が図書館、正門、チャペル、学生寮などを紹介してくれた。
17日(火) 8:30-9:30 日本語教育ワークショップ(講師 森山)

<概要>Vassar大学の日本語教育関連のスタッフ、日本語教育専攻の大学院生などが集い、日本語教育ワークショップが開催され、森山が「Holistic Education of Japanese Language in the Global Era」と題して講演を行った。グローバル時代に求められる日本語授業を、総合的教育、多文化教育、多言語教育、遠隔教育の4つのキーワードを中心に述べた後、現在世界の7大学が合同で行う「多言語多文化サイバーコンソーシアム(Multicultural & Multilingual Cyber Consortium:MMCC)」の教育実践とその意義について紹介した。
18日(水) 10:00-11:00 王さんの実習(日本語中級 テーマ:依頼)  場所 DF310号室 参加者 3年生
14:00-15:00 王さんの実習(日本語中級 テーマ:依頼)  場所 SC011号室 参加者 3年生

<概要> 依頼の表現についての授業で、作文のチェックを友達と先生に頼む場合の表現とその違いについて学んだ。友達への依頼に比べ、先生への依頼は、文も談話展開も長くなることを学んでいく。
19日(木) 20:30-22:00 TV会議によるお茶大との合同授業  
  場所 ヴァッサー側CC204号室/お茶大側人間文化創成科学研究科棟508号室
  参加者 ヴァッサー側3年生、お茶大側「グローバル化と日本語教育Ⅰ/日本事情5B」の受講者

<概要> 「日本/アメリカについて知っていること/イメージ」のアンケート結果を踏まえ、日米のイメージとその現実について質問、討論を行った。アメリカ側からは、「アメリカのイメージはどこから得るか」「なぜ率直にアメリカのイメージを話してくれないか」、「なぜアメリカに「弱肉強食」「何でもありの文化」というイメージを持つのか」、「アメリカに人種差別と多人種を受け入れる国という、相反するイメージがあるのはなぜか」、「治安が悪いと考えるのはなぜか」、「テンションが高いというイメージの理由」、「ポップカルチャーと実際のアメリカ人とのイメージの違いはないか」などの質問があった。一方日本側からは「変な祭りと感じる日本の祭りとは何か」、「日本人はみな同じと思うのはなぜか」、「英語が世界の共通語であることは誇りと思うか」、「アメリカではどんな言語が学ばれているか」などの質問があった。質疑応答は日本語で行われたが、一部の学生は発言したいが日本語で表現できないこともあり、その場合には英語で行われた。時差のため、日本側は朝10時半、アメリカ側は夜8時半から実施されたが多くの学生が集い、活発な意見交換が行われた。
20日(金) 10:00-11:00 鄭さんの実習(日本語中級 テーマ:お礼)  場所 DF310号室 参加者 3年生
14:00-15:00 鄭さんの実習(日本語中級 テーマ:お礼)  場所 SC011号室 参加者 3年生

<概要> シリアの留学生の作文を読み、日本のお礼について考察した。またなぜ、どのような時に日本人は「すみません」というかについて話し合った。


ヴァッサー大学における教壇実習・公開講演会その他報告
[担当] 菅 聡子
 11月15~22日、ヴァッサー大学において、学生による教壇実習ならびに日本語授業参加、また教員による授業・公開講演会を行った。以下、その概要を報告する。

 博士後期課程在籍中の川原塚瑞穂・武内佳代は、ヴァッサー大学の土屋浩美先生ご担当の「Japanese Popular Culture and Literature」の授業時間において、日本の若者文化の紹介を兼ねて、「ケータイ小説(Cell Phone Novel)」を素材として英語による教壇実習を行った。はじめに、二人によるレクチャーを行い、その後、出席者との質疑応答の時間をとるという形をとった。PPTとPCの映像等を多用し、ビジュアル面における工夫が凝らされ、ヴァッサー大学の学生にとっても興味深い授業形態であったと思う。また、出席者の多くは日本語の授業を受講している学生たちだが、まったく日本語を学習していない学生も受講しているため、すべて英語によって進行された。その際、土屋先生のサポートを得、授業進行をスムーズに行うことができた。

 ヴァッサー大学訪問に先立ち、川原塚・武内は日本語による発表原稿を作成し、ヴァッサー大学の学生の助力によって英語への翻訳を行った。このinteractionによって、ヴァッサー大学の学生にとっても、アカデミックな日本語の文章にふれ、それを英語に翻訳する体験を得ることになり、双方にとって有意義な学術交流となったと思われる。

 菅は、同じく「Japanese Popular Culture and Literature」の時間において、村上春樹『ノルウェイの森』についての授業と、最終日の交流パーティーに先立って公開講演会をともに英語で行った。前者においては、受講生が日本語版を読んでいないことを考慮し、さらに翻訳において生じる問題を指摘することで、日本語表現への興味を喚起することを企図して、日本語版と英語版の比較を中心に、とくに日本語版においてその待遇表現から登場人物の関係性が読みとられることを指摘し、それらが言語構造の違いから、英語版においては消去されざるを得ないこと、それゆえに、とくに語り手のキャラクター把握に、日本語版の読者と英語版の読者との間に差異が生じることを論じた。後者においては、題材としては高橋しんのコミック『最終兵器彼女』と村上春樹『海辺のカフカ』をとりあげ、とくにサブカルチャーにおいて、女性ジェンダーが暴力的に消費されることをその表象分析から明らかにし、そのような消費形態が反映する現代日本社会の欲望を、『海辺のカフカ』における暴力の行使とそこからの免責へと結びつけて論じた。

 とくに後者においてサブカルチャーを問題としたのは、米国の日本語学習者にとって、最大の学習動機が日本のサブカルチャーへの親炙にあることを視野にいれ、それらがアカデミックな研究の対象とされる場合に、どのようなアプローチが可能であるかを示すことで、趣味のレベルにとどまりがちなサブカルチャーへの興味が、さらに深く学問的に展開可能であることを米国の学生たちに例示するためである。参加者からは種々の質問が寄せられ、講演者の企図は充分に受け止められたと思う。

 上記に加え、松原優子先生の日本語クラスの初級・中級に参加した。初級クラスにおいては、自分たちで作ったスキットを演じ、参加者たちが日本語学習を楽しんでいることを実感したし、また中級クラスにおいては、学生による発表が行われ、主体的に日本語学習に取り組んでいる様子に触れることができた。

 いずれにしても、このような有意義な教壇実習ならびに授業参加等が可能となったのは、ひとえにヴァッサー大学の土屋浩美・松原優子両先生のご助力とご厚意による。深く感謝申し上げる。








   
 
 
 
 
 



(2009/11/24up)